コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
南 夏樹

日本のミュージアムを概観する


 この欄では日本のミュージアムが抱える様々な課題を、本誌のテーマ「ソリューション」に即して考えていきたい。第1回目はまず、日本のミュージアムの現状を概観してみよう。

 まず「ミュージアム」という英語だが、一般には日本語の「博物館」にあたる。日本では「美術館」と「博物館」を使い分けることも多いが、本稿では博物館と美術館、また動・植物園、水族館等も含めた総称として「ミュージアム」という用語を使用する。

 話が複雑になるが、日本の「博物館法」でいう「博物館」には、実は美術館、動・植物園、水族館等も含まれる。同法では「「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館を除く)のうち、地方公共団体、民法第34条の法人、宗教法人または政令で定めるその他の法人が設置するもので規定による登録を受けたものをいう」としている。

 上記の登録を受けたミュージアム、いわゆる「登録博物館」は現在国内に715館ある。また、登録博物館に相当する施設として、文部大臣または都道府県教育委員会の指定を受けたミュージアム、いわゆる「相当施設」が270館ある。しかし上記以外の施設が博物館と名乗ったり、同様の事業を行えないかというと、必ずしもそうではなく、平成11年度の教育白書(「我が国の文教施策」文部省)も、「類似の事業を行う施設が3522館ある」としている。平成11年度版の博物館白書(「日本の博物館の現状と課題」日本博物館協会)では、同協会の把握している国内の博物館総数を3449館としており、(株)丹青研究所が定期的に専門誌を送付している国内のミュージアムの数は5653館である。いずれにしても現在国内には3000館を超えるミュージアムがあることになる。

 次に、平成11年度版「博物館白書」を中心に、日本のミュージアムの現状を見ていく。

利用動向
 平成8年度の日本博物館協会の調査によれば、回答のあった1959館の総利用者数が1億6561万人で、1館あたり平均は8万4千人である。これに文部省や同協会の把握する国内のミュージアム総数約3500館をかけると、利用者総数は年間約3億人程度と推測される。国民1人あたり、年にほぼ3回はミュージアムを利用していることになる(ただし水族館や動・植物園を含む)。館種別に多い順では、水族館が1館平均で51万3000人、動物園が47万2000人、植物園が16万2000人、理工博物館が13万3000人、自然史博物館が9万5000人、美術館が7万2000人、総合博物館が6万6000人、歴史博物館が5万6000人、郷土博物館が1万4000人となる。
 ここ数年の利用者数動向だが、平成4年度の平均利用者数10万2000人から、9万7000人、9万1000人、8万5000人、と減じ、平成8年度には8万4000人と明らかな減少傾向にある。

職員数
 1館あたりの全体平均が8人。館種別に、総合10.4人、郷土2.5人、美術8.8人、歴史5.0人、自然史7.6人、理工13.4人、動物園35.3人、水族館29.2人、植物園10.2人である。

年間運営費
 全体平均が1億4400万円、館種別には、総合1億6800万円、郷土2600万円、美術2億1000万円、歴史8100万円、自然史1億8000万円、理工2億3800万円、動物園5億8300万円、水族館5億8900万円、植物園2億1500万円である。

収支
 年間収入の全体平均は7700万円であり、そのほぼ半分が入場料収入である。当然のことながら支出と収入の差額は設置者が負担することになる。興味深いのは館種別の経常支出/収入の値で、総合が5.96、郷土1.72、美術2.88、歴史2.20、自然史2.28、理工2.92、動物園0.97、水族館0.98、植物園1.18となる。動物園、水族館、植物園ではほぼ採算がとれているのがわかる。逆に総合博物館では支出が収入の約6倍である。総合といってもイメージしづらいかもしれないが、主に都道府県立の大規模博物館がこれにあたる。

ハード面
 平均の敷地面積が3万4000m2、建物延床面積は2800m2。機能内訳では、展示69.2%、教育普及9.5%、収集保存17.0%、調査研究4.3%である。

 以上が統計データによる日本のミュージアムの概観である。今後個々の課題を検討していく中で、“2800m2の建物、職員8人により、年間予算約1.5億円で運営され、年間8万人の利用者が訪れる”、そんな日本の平均的なミュージアム像を思い浮かべていただければと思う。

(みなみ なつき/(株)丹青社 公共空間事業部企画開発室 ディレクター)

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