コラム * tannet flash
エンターテインメント・アイ
松本 大地

ライブ・エンターテインメント


 「感動した!」と言っても小泉総理ではなく、『サルティンバンコ』を堪能した観客の声がアチラコチラで囁かれていた。今回のこのコラムでは、「ライブ・エンターテインメント」を取り上げてみたい。 

 
 最近の閉塞感ばかりの世の中で、さまざまな勇気を与えてくれる・モダン・サーカス・『サルティンバンコ』は、16世紀のイタリア語で大道芸人を意味する。"明るく輝かしい未来の姿と冒険の物語"をテーマとし、演劇、ミュージカル、サーカスなどあらゆるジャンルを超越した新しいエンターテインメントであり、アクロバティックな演技はもとより、ストーリー、照明、音楽にいたるすべてがコンセプチュアルなオリジナル異空間である。このカナダ生まれのパフォーマンス集団"シルク・ドゥ・ソレイユ"は、ラスベガスでは「O(オー)」や「Mystere(ミスティア)」も展開しており、出演者をアーチストと呼び、サーカスがアートに変革した新世紀のマジカル空間という評価を得ている。 サルティンバンコ横浜公演会場
 サルティンバンコ横浜公演会場
2時間余の息を飲む構成は、見事なまでの計算されつくした演技の連続で、各アトラクションの幕間においてもストーリーが切れることのない完璧な演出であった。夜7時の公演にもかかわらず、子ども連れの客層が多いのには少々驚いたが、それも世代を超えて共感できるからなのであろうか。
 
クラブメッド・サホロ「G.Oショー」の風景
 クラブメッド・サホロ「G.Oショー」の風景
 もうひとつ最近体験したライブ・エンターテインメントは、地中海クラブが展開する「クラブメッド」の『G.Oショー』。以前、家族でのバリ島クラブメッド・バカンス体験を楽しんだことがあり、その完成されたバケーション・システムは訪れた人々を魅了することを実感した。今回は北海道観光研究の一環として、研究会メンバーと「クラブメッド・サホロ」でG.Oショーを観劇。ジーオー(ジェントル・オーガナイザー)とは、世界から集まったバカンス村のスタッフのことで、昼はスポーツインストラクターや遊びの仲間として一緒に楽しみ、夜はエンターティナーとしてバカンスを陽気に演出するクラブメッドの重要な役割を担っている。
G.Oショーは手づくりの親近感が持ち味で、ジーエム(ジェントル・メンバー)と呼ぶゲストとのインタラクティブな構成が、そこでしか体験できない心地よい時間を醸成してくれる。サホロでは当日、ハロウィンパーティ演出のプログラムに遭遇、歌や踊り、参加型ゲームなどローテクなアトラクションではあるが、ジーオーもジーエムも多彩なコスチュームをまとい、こちらも世代を超えて子どもから大人まで一体となってのノリノリ解放感に包まれていた。
 
 さて、エンターテインメントの真髄であるライブ感は、そこでしか味わうことができない臨場感そのもの。『サルティンバンコ』も『G.Oショー』もライブ特有の五感に訴求させ、観客を物語の空間で遊ばせてくれる。
 ライブ・エンターテインメントの楽しみは開演前のブリーフィングからはじまっている。コミカルなクラウンが沸かせるパフォーマンスをしたり、コーラス隊が歌ったりとかで、開演前に観客のマインドを一定のテンションに押し上げる技術も卓越したものがある。また、幕が引けた後もエンターティナーが出口で観客を送り出したりと、心憎いまでのおもてなしもエンターテインメント・テクノロジーのなせる術といえよう。
 
 今回のケースから思うに、ライブ・エンターテインメントがいかにコミュニケーション・ビジネスの最たる業種であろうか、と痛感する。一時一時がライブ特有の送り手・受け手の真剣勝負。共同体感覚のコミュニケーションを通じて、観客は自分にとってのハッピーな体験を得る"自分探し"をしているのだろうか。幸福感を手に入れることへの支出には、低価格志向とは無縁の"こだわり消費"の傾向がうかがえる。「物質的な豊かさ社会」から「精神的なゆとりの社会」に変わっていった現在、ライブ・エンターテインメントにはさまざまな時代のヒントが隠されているようである。
 

 

(まつもと だいぢ/(株)丹青社 営業開発室プランニング&プロデュース部 部長(チーフディレクター))

このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。
Copyright 2001 TANSEISHA.co.,ltd.
All right reserved.