コラム * tannet flash
エンターテインメント・アイ
松本 大地

エンターテインメント・オペレーション


 85%の生活者が「今、特に欲しいものは無い」という新聞社調査から、あらためて成熟の時代だと痛感する。百貨店の1991年の数値を振り返ると、全国百貨店売上は9兆7000億円、店舗数260店、1uあたり年間売上は192万円とピークであった。ところが、99年には売上8兆9936億円、店舗数311店、1m2年売上127万円となり、8年間で店舗数は51店舗増え、売り場面積は大幅増加したものの、逆に売上は7000億円減り、1m2あたりの売上は34%も減っている状態である。そごうグループや地方老舗百貨店の破綻が続く現在、モノを所有することがステータスではないライフスタイルや価値観の変化に対し、どう時代適応力を強化していくのかが問われているようである。そんな消費不況の最中、新しい取り組みや発想で成長や発展を続けている施設は多々存在しており、その事例からエンターテインメントがキーファクターであることが分かる。

昨年4月東急東横店地下1階食品街のリニューアルは話題を呼び、「東急フードショー」"楽しいから、もっと、美味しい"をキャッチフレーズに、改装後は130〜140%売上増の勢いである。 "食のライブ・エンターテインメント・フロア"に変貌し、「アラカルトセレクションワールド」のシマ店舗までが厨房を配し、エンターティナーとなったシェフや職人が製造過程を見せながらできたての美味しさを提供し、シズル感溢れたライブ志向の賑わい空間と充実したイートインコーナーは、今までの百貨店とは違うトライアル型エクスペリエンスを醸成している。 一方、27ヶ月売上前年比アップ(2001/1現在)という驚異的な駅ビルがある。97年にオープンした「アトレ恵比寿」である。地域住民や駅を利用するOLやミセスの日常生活支援に特化したMD政策、時代性のあるテナント・ミックス、季節感のある施設環境、テナントとの運命共同体運営など、独自性のある手法が好調要因とされる。顧客が何を求めているのかしつこくニーズを追い求めている。その背景には、テナントとデベロッパーの徹底教育がなされており、年5回発行している情報誌に附随されたハガキには、お褒めやクレーム、要望が書き込まれ数多く返信される。それにどう対応するか徹底的にテナントと話し合い、日々の運営に積極的に役立てているのである。
お客をゲストと呼び、ショップスタッフをクルーと呼ぶオペレーション・システムは様々な感動のドラマを創り上げており、お客がファンから、さらにサポーターに変貌していることを納得させる。

 さらに、イベントで注目されているのが「新宿パークタワー・アベニュー」のフリー・マーケット。東京ガス都市開発がデベロッパーのオフィスビルで、新宿副都心高層ビル群からは離れた立地条件。地下は飲食店中心の商業エリアであるが、土日のビル人口は激減する。そこで集客手段として始めたのが、「OLフリー・マーケット」である。普通のフリー・マーケットと異なり、OLが愛着していたファッションやバック、アクセサリーなど、自分の趣味や好みを理解してくれる人々に対し、心を通わせながら売買をするという雰囲気。マスコミでも大きく取り上げられ、既に美人3姉妹やOL仲良しグループなど名物キャラクターも生まれている。年に3回開催するが、昨年12月のフリー・マーケットでは初日の午前中でほぼ売り切れの状態であった。その他、アーチストの作品を集めた、アート・フリーマーケットも年2回開催されており、いずれにおいても2日間で予想を上回る大多数の集客効果がある。当然テナント売上にも貢献し、デベロッパーとの信頼も厚くなっている。

OLフリー・マーケット

OLフリー・マーケット

 これらの事例は、どれも「モノの安さ」や「便利さ」だけを求めたものではなく、そこにある「楽しさ」「体験」「おもてなし」に顧客が共鳴しているのである。成熟の時代は「モノ」から「ココロ」に重点がおかれており、どう受け手の心を動かせるか、どうときめかせるかにより購買や集客が左右される。そのすべての問題解決の切り口がエンターテインメント・テクノロジーであり、21世紀における商業施設計画や施設運営の決め手となるのである。

(まつもと だいぢ/(株)丹青社 営業開発室 企画・テナント情報部 部長)

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