コラム * ローカルトレンドニュース
from nagoya
土谷 雅彦

名古屋「うなぎ事情」



 名古屋人はどうして鰻が好きか…。名古屋人ならずとも日本人であれば大多数は、甘辛く香ばしい「あの味」が好きなはずだ。もっとも、甘辛食文化が浸透する名古屋に暮らす人々は、とりわけタレと鰻の織りなす、濃厚な味が好きなのかもしれない。
 「伊勢参拝ヘ向かう旅人たちが栄養補給をするために、昔から街道沿いに鰻屋が繁盛していたらしい」―名古屋人の鰻好きは、単に甘辛好きなだけでなく、地形や民族文化などにも影響されている。愛知県は浜名湖を凌ぐ鰻王国なのである。
 
 さて、そんな名古屋鰻の代表格といえば「ひつまぶし」である。ひつまぶしとは、いわゆる鰻の蒲焼きどんぶりであるが、ごはんの上に細かくブツ切りに刻んだ蒲焼きがのっていて、どんぶりではなくお櫃(ひつ)に入ってでてくる料理である。
 おおよそ食べ方はどの店も同じである。一人前(とはいっても茶碗3杯分はある)のお櫃から鰻とご飯をよそって、まず1杯目はそのまま食べる。おかわりのように2杯目を取り、こんどはネギやワサビ、刻み海苔などの薬味をトッピングして味の変化を楽しむ。そして3杯目は2杯目と同様に茶碗にご飯、鰻、薬味をよそい、その上から茶(煎茶)、もしくはダシ汁をかけ、茶漬けでサラサラと流し込み、3段階でお櫃の中を空にする。
 鰻に茶漬け…・。これがどうにも生臭いことしか想像できないでいたが、実際に食べてみると、なんとも言いがたいさっぱりした味わいである。一粒残さずいただける「ひつまぶし」はしっかり者気質で知られる名古屋人が生んだ、素晴らしいレシピである。
 
 この「ひつまぶし」発祥の店が名古屋市中区錦にある「いば昇」である。三代目が、天然の鰻は季節によって皮が堅くなるので、食べ方を工夫しようと考えたのが始まりだという。
 「いば昇」は名古屋の繁華街の真中にあって、ビルの狭間に古い木造の姿を残している。私が訪れた時は休日の早い時間帯だったため、あたりは閑散としていたが、「いば昇」だけは外に列をなして賑わっていた。
 
 鰻が苦手でも、これなら食べられるという人が多いこともあって、とにかく名古屋人は鰻をよく食べる。そして各店、味を競い合う。さらに名古屋の鰻はレベルを上げていくであろう。
 
(つちや まさひこ/(株)丹青社 名古屋支店)

 

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