■コラム * tannet flash
環境演出デザイン考
出原 秀仁
私の環境演出デザイン考(その2)
その場所でしか、そのモノでなければ味わうことのできない、他には無い独自の気分・雰囲気。この独自の気分・雰囲気をクライアントに、そして何よりもお客様(ゲスト)に提供することが、環境演出(シーンメイキング)の目標であり、場の商品価値を創出するということになります。
前回のコラムで「デジタルネットワークが普及・進化すればするほど「場所」の個性や価値が求められる」と言うことをお話しました。高速ネットやブロードバンドなど居ながらにして、いつでもどこにいても、欲しい情報や商品を手に入れることができるようになればなるほど、私たちは場所や空間の持つ役割をシビアに考えなければなりません。わざわざ時間と体力を割いて場所や空間に訪れるに値する魅力(商品価値)をゲストに提供することに注力しなければなりません。このことは言い換えると、独自性・絶対性を確保することであって、私はこの独自性・絶対性を場所や空間における「気分・雰囲気」として捉え、その構築手法として環境演出(シーンメイキング)という手法を使っているわけです。
情報化社会と言われて久しいですが、このことばの日本における一般的な英訳は「Information Society」です。しかし本来の英語表現は「Information&Communication Society」というのだと言われた方がいます。その方は「今の日本はこのCommunicationが置き去りになって情報部分が特化された片手落ちの状況」なのだと。「情報を知りその場所に行って楽しむ」ことが本来の姿であって、そうしなければモノの本質や満足は得られないのだそうです。基本は「同じ場所・同じ空間で行うPerson to Personのコミュニケーション」。Communicationは人間だけでなく全ての生き物にとって無くてはならない行為であることは疑う余地もなく明白なことです。しかしながら場所や空間をないがしろにしたインフォメーションだけが際だったバーチャルなコミュニケーションでは片手落ちなのです。
10年一昔ではなく、5年いや3年一昔と言われるくらい物事が変化するスピードの速い忙しい時代ですから、誰だって利便性や即効性を求めます。けれどもそんな時代だからこそ空間や環境を扱う我々クリエイターは、機能や色や形だけのデザインではなく、しっかりとしたコンセプトやメッセージを持った「独自の気分・雰囲気の提供」を行う。すなわち「シーン」を提供すること。そして真のコミュニケーションシーンを提供するために、そうしたバーチャルとリアリティーのバランスをとることを心がけたいものです。
私のデザインビジネスにおける対象は主に商業に関わる領域です。そこでは集客と言うことが重要視されます。どんなにかっこいいお店を作ってもお客様がこなければ話になりません。商業デザインでの評価の一つは、「いかに集客ができるか」ということです。この意味で商業施設は言い換えると「集客施設」ということができます。
何度も繰り返しになりますが、私はこの集客を達成するために環境演出という手法を使います。独自のシーンで集客を図ると同時にその集客を継続的に維持するためには話題の提供を行う必要があります。私は「集客施設とはサメのようなもの」だと思うのです。一度泳ぎはじめたら死ぬまで泳ぎつづけなければいけない。サメは一時でも泳ぐことをやめてしまったらそこでThe ENDです。集客施設として泳ぎつづけると言うことは、継続的に話題の提供を行うことです。プロモーション・イベント・MDの改善・運営サービスの更新・新情報の発信など様々な話題を継続的に提供する術を持っていなければなりません。
私の環境演出デザインでは、この継続的な話題の提供に繋がるシーンをあらかじめスクリプティングワーク(脚本づくり)の中で、プログラムしておきます。もちろんプログラムするといってもすべてを描けるものではないので、そのきっかけとなるシーンを組み込んでおくという程度ですが。ここで大切なことは、提供する話題は施設テーマとは何の脈絡のない受け狙いの、奇をてらった突飛なモノではなく。あくまでその場所で提供する本来の独自の気分・雰囲気と必然性を持った話題であるべきなんです。(づづく)
(いずはら ひでひと/(株)丹青IDS取締役 プランニングデザイン2部* 部長) *TANSEI INTEGRATED DESIGN STUDIO CO.,LTD. Scene Make Space Design DIV.
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