コラム * tannet flash
「レプリカ」と「バーチャル」の世界観
古川 俊弘

華やぎの季節 ―色彩の彼方へ


 街に色があふれでる季節となってきた。春色を身にまとった新しい生徒の群れ、入学、入社、転勤などによる新しい土地での生活、雪解け、ひらひらと桃や桜のむせかえるような色合い。芽吹き始める新緑の木々。華やぐ色、萌える色、息吹の色など生命感にあふれるさまざまな色が乱舞する。われわれの仕事のひとつとしてシーズンディスプレイというものがある。季節ごとのイベントに合わせひとびとに季節感や風物詩を提供する。定番モノのディスプレイ小物とともに、ある程度決められた色が毎年繰り返されていく。
 
 季節の変わり目と共に世に何百万色あるといわれる色について、それぞれが独自に色と関わっていること、知らず知らずに色がしめす意味に引きずり込まれていること、などを思った。
 

 
 その昔、十二単は季節によって重ね合わせる色を微妙に変えていたらしい。春は、青山吹(あおやまぶき、青+黄)、早蕨(さわらび、紫+青)、白躑躅(しろつつじ、白+紫)、秘色(ひそく、瑠璃色+薄色)、若緑(わかみどり、萌葱+紫)などの衣の表と裏の配色、もしくは、衣と衣の配色を決めていたという。十二単が季節により重ねる色を変えて表現する美意識は配色の妙である。ついでに日本の伝統色を見てみた。紫系では藍海松茶(あいみるちゃ)、黒・白・灰色系で空五倍子色(うつぶしいろ)、赤系で土器色(かわらけいろ)、黄色系で蒲公英色(たんぽぽいろ)などの表現を見るとじわっと情景が浮かんでくる気がする。目指す色の原料と製法が垣間見られて興味深い。読むのも苦労する単語が並んでいるが、その色合いも見本を見てみないとくやしいかな現代では、なかなかわからない。
 
 
 色のことを考えていると世界が際限なく広がってきた。たとえば単語、色恋沙汰・色物・色街・色男。行為として、色をつける・色よい返事をもらう・お色直しをする。感情の起伏表現として、色をなして怒る・色めきたつ・色を失う・色を正す。見方・見え方として、色めがねで見る・疲労の色が濃い・政治的色彩を濃くする・敗色濃厚。方位を示す表現として、南は朱(あか)・北は玄(くろ)・東は青・西は白。性格診断法による色の区分。その日のハッピーカラーの占い。etc…。などなど象徴、感情、表情、状態、特徴付けなど色があらわす世界は多岐にわたっており改めて見るとすごいものがある。 
物理学では光の波長の異なりとして示される、スペクトル。原色というのはどんな色を混ぜ合わせてもつくることができない色のこと。三原色は混ぜ合わせ方ですべての色ができる三つの基本的な色、光線では黄みの赤・緑・紫みの青(一般的にはRGBと呼ぶ)。染料や顔料、絵の具ではシアン(緑みの青)・マゼンタ(赤紫)・イエロー(黄)(一般的にはCMYと呼ぶ)。色の三属性は色相、明度、彩度。ぐらぐらしながら街を歩いていると世界は色と線と点で構成されている、などと印象派的な見え方になってきた。美醜、明暗、快不快を感じ取る方法。種類は極めて豊富だが、多くは程度の差をあらわす。さてさて色とは何だろう。
 
 
 色の中にある我々は、当然ながら業務の中で、色との関わりは非常に多い。空間としての内装・インテリア、文化施設、展示会・イベントなどでのカラーリングは必須条件であり腕の見せ所でもある。全体・部分・演出としての効果、デザイン性、メッセージ性などを表現する組み合わせは無数にある。
 一方、厳密に規定された色も同時に扱わなければならない。国旗、企業のVI・CI・ロゴ、スクールカラーなど象徴としての独自の色は多数存在する。当然ながら企業のカラーを表現する時、姿勢や思想・意志を正確に表現するためには厳密に使用方法や条件が決められており、どこで表現されても均一の品質が保証されなければならない。
 
 近年、複雑な表現や色を再現する技術や形態が大きく変わった。グラフイックを製作するために、ハードでは高精細の出力機器、ソフトではイラストレーター・フォトショップなどを搭載したデジタル処理で作成するのがほとんどとなった。サインに関しても同様な技術がベースとなり、従来大量生産が困難であったグラデーション表現なども各種技術で容易になってきた反面、人着の技術やグラフィックの版下製作は世の趨勢で希少価値となってきた。
 
 
 色の中を突き抜けていく。薫風に吹かれながら色の中に場所をさがす。色を混ぜる。色を融合させる。自分の中に色を定着させていく。組み合わせや効果に関して無限の可能性が広がっていく。
 夢の中で何か大事な、神秘的なものをつかみそこなった時、色彩の彼方へ思いをめぐらすのも一興であろうか。
 
(ふるかわ としひろ/(株)丹青社 IMC事業部 業務・購買部 購買課 課長)
 

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