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■コラム * tannet flash 「レプリカ」と「バーチャル」の世界観 古川 俊弘 究極のレプリカと実物のはざま 博物館などでの展示に使われる精巧な複製物や、絵画・ 美術品などの複製を「レプリカ」とよぶことがある。「写し」の対象がはっきりしていて実体をもち、それを正確にコピーしている場合を指すのが普通だが、ここでは少し概念を広げて考えてみたい。 貴重な学術資料を展示用に複製するといった場合にとどまらず、商業施設やアミューズメント施設などの空間づくりでも「レプリカ」的要素や発想は限りなく見られる。テーマパークや店舗でさまざまなモチーフに基づいて造形を施す場合もあれば、建材などで「石風」(いしふう)をはじめ○○風といわれる質感表現があったりと、多彩である。 さらに広く考えると、ある世界や"現実"を擬似体験する「シミュレーション」とか「バーチャル」といわれる技術・手法にもつながっていくように思える。これらはその世界や現実についての「レプリカ」といえなくもないからだ。われわれ空間の演出や展示を扱う業務に携わる者は、こうして日々「レプリカ〜バーチャル」なものたちに何らかの形で接しているといってよいだろう(表)。 「レプリカ」的な流れにあるモノづくりでは、対象物が実存するかどうかという大きな違いはあれ、作り出すものの現実味とかリアリティがたいへん重要になる点はひとつである。まさにその「リアル」の追求という部分に、ある種モノづくりの醍醐味とやりがいの極み、さらにはそれぞれの苦心や課題解決が秘められている。そして同時に、「リアル」を追求する「レプリカ」「バーチャル」は「実物」とか「現実」とどう関わっていくのか、という問題も絡む。これから数回、作り手側の思いも絡めながら、われわれがいわば作り出した「リアル」はどこまで元の「現実」とせり合えるのか、を考えていきたいと思う。
実際、何かに近づけてモノを作る作業というのは妙にワクワクする作業だ。対象は物としてはっきり存在する場合もあれば、何かの体験自体のこともある。その作業は、「現物」「実物」や「オリジナル」、場合によっては「イメージ」などとして想定される物事に対し、いかに近づくかという創造的プロセスである。そしてそこには作り手のモノづくりの探求姿勢が投影されている。 近づけて作るといっても、求めるものにより、技術や技法・製法は多彩である。ただ似ていればよいわけでもない。時には実物と寸分違わない精度が最優先のこともあるが、その他にも、時に強度であったりコストであったり、人が触れるときの安全性を考慮したり、また材料が限られたりと、実はけっこう制約が多い。用いる技術・知識も、建築系、土木系、美術系、アート系、古来の伝統技術、軍事技術、メカトロ技術、最新のデジタル技術などから適宜選んで組み合わせる。 一方で、博物館などの資料を複製するとき、凝れば凝るほど本来の(現物が作られたときの)製法に近づかざるを得ないのも常である。古文書の再現なら、和紙の産地や紙の漉き方をはじめ、墨のかすれ、虫食いの穴、紐の縒り合わせ方法、など課題は際限ない。もちろん凝るほどに費用も膨張するので、費用対効果の点で限度はある。費用の枠さえなければああして、こうして… と夢想するのは作り手ゆえの密かな楽しみだろう。 さて、現在の技術ではこうして物理的には実物と寸分違わぬレプリカを作れる場合もある。そして先のような追求も加える結果、むしろある部分(保存性とか耐久性などをはじめとして)では元の対象物を凌駕することもあろう。では果たしてこれは現実・現物になりきった、あるいはそれを超えたことになるのか。これら作り出された「現実」は、やはりオリジナルに対してはどこまでいっても「レプリカ」であり、その一線は越えられないと思っている。だからこそ、実物には替わり得ぬ宿命と限界の中で鋭くその境界を探求する行為にひきつけられるような気がする。
(ふるかわ としひろ/(株)丹青社 積算購買室購買管理部 課長)
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