■コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
粟国 嘉隆
メッセージを増幅させるデザイン
普段から展示を企画・設計する立場にあって、改めて自らの取り組みを振り返り、
その意味を問う機会は少ないように思われる。
しかし、今一度、企画・設計者として自らのスタンスを再確認するために、
あるいは目指すべき姿を見つめ直すために、根本的な問いにふれてみることも大切なことだと感じる。
例えば「デザインとは何か」という問いかけはどうか。
「デザイン」という一語をとっても、博物館の展示企画や設計に携わる者それぞれの捉え方が存在する。
さらに建築やサインといった分野までその問いかけを広げるならば、さまざまな思考が巡らされることだろう。
| 2005年2月に名古屋で行なわれた「デザイン・トリプレックス2005[日本の空間デザイン賞]デザイン展&シンポジウム」は、
この「デザインとは何か」という純粋な問いを広く聴講者に投げかけたイベントとなった。 シンポジウムは3つのデザイン団体――(社団法人 日本ディスプレイデザイン協会(DDA)、
社団法人 日本商環境設計家協会(JCD)、社団法人 日本サインデザイン協会(SDA)――による合同企画として開催され、 それぞれのジャンルを代表するグランプリ受賞者3名によるディスカッションが繰り広げられた。
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パネルディスカッションの様子。各分野を代表するデザイナーたちがそれぞれの受賞作品を通じて空間デザインを語る |
ディスプレイ、商環境、サインという、異なる分野で成立した独自のデザインが出発点であるにもかかわらず、3人とも共通して、伝えるべきメッセージの明確化、そしてデザインするプロセスに焦点を当てて議論していたことが印象深い。最近ではただきれいなもの、メッセージ性のないものはデザインコンペの審査でも残らなくなっているという。「石の記憶 ヒロシマ・ナガサキ展」を手掛けた洪恒夫氏は「デザインはメッセージを増幅させる力をもっている。展示のミッションとして「何を伝えなければいけないのか?」というメッセージを深く追求し、効果的に伝えるための方法論がしっかりと講じられたかどうかが重要であり、そのプロセスが力強ければ魅力的な空間となって反映されていくもの。」とデザインのプロセスこそが最終的な"魅力的な形"を決定づけると語った。また「ランバン ブティック銀座」をデザインした中村拓志氏は、受賞に際しては、ファサードの美しさだけではなく、自らのコンセプトを実現させるために新たに特許技術を開発した経緯も含めて評価されたのではないかとコメントした。そして5年間で解体しなければならないという時限プロジェクト「SOYA」を提案した平沼孝啓氏は、建築をつくるということ以上に"壊す"ことの意味を問い、最終的な完成型だけでは評価できないデザインのあり方を聴講者にアピールした。3人の発言から、空間のデザインが単なる形のみにとどまらず、人々の生活の中でより多くの意味や役割を持ちはじめたことで、どのようにしてその空間を体験してもらうのか、というねらいまでを見据えた一貫したデザインプロセスが求められていることを実感した。博物館でも体験型の展示手法が望まれる場面は意外に多い。伝えるべきことを明らかにし、来館者に応じたさまざまな体験を可能とする場を具現化する効果的なデザインが今、まさに必要とされている。
「デザインはメッセージを増幅させる力をもつ」という一言は、資料の内に秘められた情報を伝えるという、博物館の展示として最も基本に立ち返ることであると同時に、次世代のデザインへの可能性を感じさせる言葉である。もう一度デザインについて考え直す足がかりとしては興味深いキーワードと感じた。

同時開催された[日本の空間デザイン賞]2004年度グランプリ受賞記念作品展の様子
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会場のアトリウムでは[日本の空間デザイン賞]デザイン展・総合展も開催された
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(あわくに よしたか/開発デザインセンター クリエイティブ3部 プランナー)
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