コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
粟国 嘉隆

市民の声を身近に感じる展示設計


 博物館などの展示施設における計画や設計には基本的なプロセスがあるものの、設置する目的や扱うテーマ、資料に対する方針(収蔵主体・公開主体など)によって進め方はさまざまである。また博物館を市民の活動の場と捉える最近の傾向を考えると、開館後に展開する活動プログラムによっても、展示計画・設計への取り組み方は変化する。テーマが充分に理解してもらえるかなどの展示意図の明確な表現はもちろん、「対象となる人々に充分に活用してもらえるか」が展示計画・設計の目指すべき着地点の一つといえる。
 
未だ完成していない博物館・展示施設について、利用者の活用に対する要望を取り入れようとする試みはこれまでにもいくつか行なわれている。アンケート調査をはじめ、市民の中から希望者を募って委員会や意見交換会を開くことなどはその一例である。最近ではより体験性を重視して、ワークショップの形式をとりながら幅広い市民の意見を展示設計に反映させる方法が徐々に模索されている。
 
 現在豊橋市が計画している「豊橋市子ども関連施設等」における展示設計もより幅広い利用ニーズを初期段階から取り入れようとしている事例の一つだ。「豊橋市子ども関連施設等」は「世代をつなぎ、まちをつなぎ、時代をつなぐ」をテーマに子どもたちを中心にさまざまな世代の人々がふれあい、つながりをもつことを目指した交流・体験施設である。今後どのように活用していきたいかという市民の要望によって施設の方向性が定められていく、柔軟性に富んだ考え方を持つ施設でもある。 

展示設計スタッフがワークショップを運営、子どもたちの興味の度合いを肌で感じながら市民と共に体験する


アニメーションワークショップでは、参加者同士が教えあう場面も見られ、子どもたちならではの興味がさまざまに引き出された
 展示設計においてもその柔軟性は生かされている。設計内容の一部を体験プログラム化し、市民に実際に体験してもらうことで、その反応や要望をじかに確かめようとする「プレイベント」を開催、展示設計のプロセスに組み込んでいる。2004年7月に開催されたこのプレイベント「こどもDAISUKIタウンまつりときわ通り」は開催場所を建設予定地に近い商店街の中に設定、商店街の夏祭りと連動して展開された。ペーパークラフトや絵はがきづくりといった気軽に参加できる体験から、自分の姿を1/20のサイズに縮小した画像を印刷して工作の材料にしたりアニメーションをつくったりするデジタルアートのワークショップまで、幅広い興味を引き出そうとするプログラムが展開された。

  また商店街を巡る地域巻き込み型のワークショップも行なわれるなど、それぞれが創造する楽しさや新たな発見ができる工夫があり、会場は大勢の参加者で賑わっていた。
 このプレイベントの運営には、豊橋市のスタッフを中心に、展示設計に携わる多くのスタッフが積極的に参加している。市民とふれあいながら直接市民の声を聞く、ここでのすべての活動が、より市民に近づいた施設運営プログラムの提案となって展示設計に反映されることになる。また、地元の商店街や大学・高校などの教育機関と連携し運営を進めたことで、運営サイドからの地域に密着した意見や感想を取り入れられたことも今回のプレイベントの特徴といえる。

商店街を巡ることで子どもたちの新たな発見を促すワークショップ。体験のまとめでは撮り集めた写真を使ってオリジナルの商店街マップを作成した

 
子どもたちの声が響き、親子づれがたくさん訪れたこのプレイベントは、大人が主な購買層となる普段の商店街とは異なる活気と賑わいをもたらした。自ら設計する展示施設の将来の利用者とともにイベントを楽しむ。そんな市民を間近に感じることのできる展示づくりがまちづくりにもつながる、新しい展示設計の取り組みが少しずつ始まっている。
 

(あわくに よしたか/(株)丹青社 公共空間事業部 企画開発室)
 

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