コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
粟国 嘉隆

あそびと学びをつなぐ糸口としての展示 ワークショップコレクション2004から


 博物館の展示を活用したさまざまな活動は、いまや日常化されつつある。中でも子どもたちを対象とした活動は注目されているものの一つだ。子どもたちの興味や個性に応じた「教育」という側面からも常に新たな試みが模索されている分野でもある。その新たな試みの一つとして、展示の一環としてのワークショップのあり方も検討されるようになってきた。
 
 2004年1月に行なわれた「ワークショップコレクション2004」(主催:NPO法人CANVAS)は、子どもたちの創造性を大切にした新たな表現活動を支援する重要性を意識して、モノづくりや自由な表現を促す14種類ものワークショップを一同に集めた初の試みである。最新のデジタル技術を駆使した創作体験から、アーティストによるインスタレーションまで幅広く集められており、それぞれが独自の魅力を放つ。CG制作のようにデジタルデータの扱い方を強く意識させるワークショップもあれば、独自に開発したインターフェイスでパソコン操作にとらわれず、簡単にアニメーション制作できるワークショップもある。中にはアナログとデジタルの手法が混在しながら子どもたちの創造力をかきたてるワークショップもあり、手法にこだわることなく、子どもたちの発想を大切にしている。 写真1
1. 空間いっぱいに張り巡らされた糸でんわ

写真2
2. 紙コップという身近な素材が、たくさんの糸でんわとしてつながることで、子どもたちが自分を取り巻く人と人とのつながりに気づくきっかけに変わる。(写真中央は紙コップアーティストのLOCOさん)
 これらのワークショップは子どもたちにとって「あそび」感覚で気軽に参加できるものばかりである。「遊ぶ」楽しさを導入として、積極的な参加を促し、伝えたいテーマに子どもたちの意識を近づけたり、体験の基本となる原理の理解を促したりすることは博物館における展示やワークショップの重要な役割でもある。特に子どもの体験型展示を企画する場合、あそびや動機づけに終わらせることなく、その後の気づきや学習へ発展させていく手がかりを残しておく工夫は重要な要素といえる。
 
今回集められたワークショップの中で一例を挙げてみると、紙コップアーティストのLOCOさんが行なった「糸でんわで世界とつながる」がある。紙コップをたくさんの糸でんわとして結びつけるこのワークショップ(写真1、2)は、1対多人数で糸でんわを楽しもうというコミュニケーションアートの体験である。コップの底には自分の顔写真が貼り付けられており、だれもが一度は作った「糸でんわ」を通じて自分と大勢の人々とのつながりをイメージさせている。自分のまわりにある人と人との関係について改めて確かめ、考えて欲しいというアーティストの意図を直感的に理解できるこの試みは、あそびから学びにつながる展示のあり方の一つを示していた。

 
 来場者は体験を目的とした親子連れのほか、ワークショップに関心のある学校関係者、博物館関係者などワークショップを主催しようとする立場の方々も多く訪れており、さまざまな人々の交流のきっかけともなった。また、「子どもに向けたワークショップ」を手がかりに、これまで交流する機会の少なかった異分野の人々を結びつける場づくりとして、このような試みをNPO法人が主催している点にも注目すべきではないだろうか。ワークショップという手法を用いて子どもたちとどう接していくか、子どものためのワークショップという活動形態をどのように活用していくか、それぞれの立場の中で新たな挑戦がはじまっている。これらのワークショップに夢中になっている子どもたちの姿を通して、あそびと学びを見えない糸で結ぶことのできる展示とは何か、改めて考える機会にふれた思いがした。
 

(あわくに よしたか/(株)丹青社 公共空間事業部 企画開発室)
 

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