■コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
粟国 嘉隆
博物館の運営について〜展示手法の視点から
かつての多くの博物館が貴重な資料を保存・管理しながら、その一部を展示していく役割を担っていたころは、資料の内容やテーマによって博物館種を類型する分類学や、照度や湿度を測定する保存科学などが中心の話題の一つであったあったかもしれない。これまで提示されてきた4つの博物館の基本機能(調査・研究、資料収集・保存、展示、教育普及)についても、より細分化され、それぞれの専門分野の立場から博物館を見直す動きが活発化しており、その話題は多方面に検討領域を広げている。
その中で「運営」というキーワードも最近、話題性を感じられるものの一つだろう。博物館の運営について検討されるようになった背景には博物館を取り巻く社会的・経済的な変化もあるが、ここでは博物館の展示手法に焦点をあてながら「運営」というキーワードをふくらませてみたい。
展示企画(設計)者が主として常設展示の提案を行なう場合、「運営」を視野に入れて検討することの多いものは体験が伴う展示である。これまで、体験型の展示といえば科学館や子ども博物館などで多く用いられる手法と考えられていたが、ここ数年、館種やテーマに限らず多くの施設において体験性を重視した展示を求められることが多い。
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体験型の展示の特徴は、利用者が展示に積極的に関与することではじめてその相互性により機能を発揮する点にある。ただし、有効に機能するためには、体験を促す「しかけ」が必要となる。「展示フロアのどこに配置すれば利用されやすいか」「他の展示と干渉したりしないか」といった展示全体計画における位置づけはもちろん、「操作のしやすさや安全性にも配慮した解説計画」なども必要になる。例えば、グラフィックパネルを用いるより、展示解説を行なうスタッフを配置したほうが操作説明も柔軟に行なえ、装置の原理など展示意図をより体験者に伝えやすい。
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 ワークショップで製作した衣装やアイテムを持ち込んでスタッフと一緒に楽しむなど、展示とワークショップを一つのコンセプトでつなぎ、運営スタッフを含めてコーディネートしていく
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このような事柄を検討しようとすれば、「そのフロアにはどれくらいの人数が収容(体験)可能であるか」「どのような時間帯にどれくらいの解説スタッフ数を配置すれば効率的か」といったことからも考えていかなくてはならない。これらは施設全体の運営方針が基本となってくるため、企画(設計)者は対象となる博物館の運営がどのようなものであるかを把握・理解しながら提案を行なうよう心がけることになる。
ところで、鑑賞型の展示から体験型の展示へその比重が変化していくことが博物館の展示手法の大きな流れだとすれば、体験性をより高めていく先にはどのような形態が待っているのだろうか。最近では、博物館を展示に触れる場としてだけでなく、さまざまな人々が、それぞれの興味に応じて活動・体験するための場として捉えられはじめている傾向がある。このような要求に沿った展示手法とは“ワークショップ”に近い形態となっていくのではないか。博物館におけるワークショップは、従来からある実験や工作などの体験プログラムから、施設コンセプト理解のためのスタッフ向けプログラムなど、さまざまに行なわれている。博物館スタッフが主体となって実施することが多く、まさに博物館全体の運営の一環と捉えることができる。それゆえに展示を提案する側が運営に関わることが少なかった領域でもある。
 実際に映画で用いられている特殊メイクでおばけに扮する子どもたち
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しかし一方では、新たな試みもはじまっている。多摩六都科学館ではワークショップについて、プログラムや運営スタッフまで展示企画としてコーディネートし展示と連携させた。夏の特別展「科学のおばけ展」はその例だ。科学の原理を応用したおばけ屋敷の展示と、ホラー映画で用いられるような特殊メイク体験などのワークショップを組み合わせた展開で、運営スタッフには展示企画・設計者が加わっている。 |
これには、展示コンセプトを十分理解したスタッフが来館者とコミュニケーションをとりながら解説できる大きなメリットがある。自らが企画し、設計した展示を来館者と一緒に楽しむ。子どもたちとともにワークショップを進めるスタッフの姿には、展示を提供する側が運営に参加することの意義と充実感があった。
(あわくに よしたか/(株)丹青社 公共空間事業部 事業企画室)
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