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■コラム * tannet flash ショップス・ニューウェイブ 朝田 賢治 ジョン・A・ジャーディと相対性理論
つまらない大学の講義ほど長く感じたものはない。病院の待合で診察待ちをしている時、仕事で失敗をして上司から叱責されている時、電子レンジで食べ物を温めている間にカウンターの数字を追っている時、人は時間をとても長く感じている。一方、久しぶりに会った友人との時間はあっという間に過ぎてしまう。1点負けていたワールドカップのあの時の試合は意外に時間が無かった…。人は必ず生まれもった一定のリズムで「時」を感じている…はず。安定した日常は決して刺激も無く、交流も無い。それが普遍の真理。
1996年4月、南日本に降り立った巨艦 SC『キャナルシティ』との最初の遭遇は、その施設の色使いの斬新さ、来店者に何かを期待させる直線のない曲がりくねった通路など驚きの連続であった。グランドキャニオンの地層に似せた外装コンセプトなど、かつて日本では見たことの無い建物ゆえ、ぐるりと眺めているだけで時間があっという間に過ぎてしまった特異な体験であった。計画当時を振り返りデベロッパーの福岡地所、榎本代表はこう語った。「デベロッパーが仕掛けをしなければだめだ。しかし、怖かった。日本中探し回ってもあんな色とりどりの建物は無かったから」と。そして2002年11月、JR川崎駅近くに『ラ・チッタデッラ』が開店。再び建築を担当したジョン・A・ジャーディは今、日本の商業建築界の人気者となっていた。彼はイタリアをこよなく愛するオーナーの夢を、温かみのある欧風建築による街づくりで実現した。イタリアの丘陵の町をテーマに緩やかに続く石畳の曲がりくねった坂道に商店がならび、MDごとのまとまりではなく、混在することで逆に町としても調和がとれた修景が異彩を放つ。 続いて12月、峡谷と石をイメージした汐留電通本社ビルの下層に開店したSC『カレッタ』も彼の作品。小さい規模ながらもライブも行なえるB2階の「カレッタプラザ」を顔として、多彩で複雑な曲動線と、起伏に富んだ演出性により、各界が注目している。そしてこの4月には、森ビルの一大プロジェクト『六本木ヒルズ』で更なる完成度高い街をプロデュースする。 ジャーディは施設計画において最も重要であるのは「建物の間の場所」であると言う。そう思い始めたきっかけは、「40年ほど前、トスカナ地方の丘陵村落を旅した時、人々が交流してコミュニティを経験する場所が、ヨーロッパの古い偉大な都市の広場や中庭やくねった街路だ、と気づいた時」と言っている。(『集客』六耀社刊)すなわち豊かで活気あるヒューマンスケールな体験がまず最初にあり、そして初めて建物のデザイン、あるいは都市のデザインが「人の動き」によって導き出される、と着想した。人々が行き交う広場などの場を設定することで、彼は我々の時間をとても楽しく短いものに感じさせている。アインシュタインが検証した「時間が不均衡に存在する」ということを偶然にも彼は建築空間で実現させてくれている。 ジョン・A・ジャーディの建築は究極のセルフサービス。従来のSCでは効率、統一感といったテーマで客と常に対峙する時間を短く設定していた。品定めをする時間を浪費することは客にとって価値を生むことと同時にSCにとっても多大なタイムバリューを落としてくれる。 「時空」の概念をジョン・A・ジャーディのデザインで検証した今回、残念ながら早いもので、制限されたコラムの文字数はそろそろ消化してしまう。楽しいことは(?)やはりあっと言う間に過ぎ去ってしまうようだ。また次号。 (あさだ けんじ/(株)丹青社 商空間事業部 第3営業部 部長)
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