コラム * tannet flash
ショップス・ニューウェイブ
朝田 賢治

新郎が一曲ご披露いたします!


 威儀正しく厳かな神前和式の結婚式を挙げ、そして披露の宴に入る。司会の男性が「それでは皆さま、新郎新婦のご入場です」と開会を告げ、音楽がスタート。「ジャーン、ジャ、ジャーン・・・」と、何かとても似つかわしくないアップテンポの前奏。でも聞き覚えがある。そうだ、西城秀樹の『ヤングマン』だ。先輩仲人を先頭に、新郎、新婦と大きく手を振って行進、目指すは高砂殿、という感じ。でも新婦はちょっと、嫌そう。仲人夫人も「まったくこの人たちは・・・(私は反対したのよ)」といった風で少々腕の振りが甘い。とにかく会場は大爆笑だった。サビのYMCAを終え、大きな拍手のなか、席に着き4人揃って挨拶をした。そして「まず始めに、新郎が一曲ご披露いたします」と続いた。もうその後何があるかは予想がつかなくなった。今からおよそ20年ほど遡る、私にとって結婚式という「カタチ」が壊れたある晴れた夏の日の、赤坂日枝神社であった。
 
 ウェディングのスタイルを象徴的に変えたのは、紳士服のアオキが「アニヴェルセル」を表参道に開店した1998年秋。格式を解体し、表舞台にその新しい「記念日」のあり方をシンボライズさせた瞬間だったように思う。続いて2000年3月には「アニヴェルセルヴィラ横浜」を投入、鐘楼と尖塔が聳え立つ白亜の教会、南欧をテーマとした装飾にステンドグラスが冴え、「その石を踏めば幸福になれる」という伝説をもつイタリアのバージンロードの石畳が人気を呼んでいると言う。
 
 都会のリゾートの台場では、メリディアンと有明湾座の間に『パルティーレ有明ウェディングヴィレッジ&スクエア』がまもなく4月に営業を開始する。4000坪の敷地にイタリア、イギリス、フランスそれぞれをテーマとした庭付き邸宅風の洋館をゆったり構え、既存のホテルと真っ向勝負を挑む恰好だ。2次会スポット六本木、麻布地区には『麻布迎賓館』と称して瀟洒なガーデン付の欧風邸宅風スポットが6月に計画されている。昨年春に開店した晴海トリトンはウェディングレストランの集合体である。『バサラ』『クイーンアリス』『トゥーランドット』、そして『イルピノリーノ』など、海の神が床に描かれた「神話の広場」でのフラワーシャワー、運河に面した多壇式ガーデンは記念写真に最高の舞台となっている。
 
no5.jpg  かつてスモークがたかれたゴンドラから主役を登場させて話題となった平安閣が街から姿を消し、その大半が建物ハードの汎用性のなさに泣かされながら葬祭場へと変身を遂げた。現在、都心部の統計ながら、仲人をお願いするカップルの割合は10%しかいない。親代わりがふえるなんてとても面倒なこと。親類縁者のスピーチは激減し、演歌、浪曲を歌う赤ら顔の親父は出番を失った。花束交換に代えて、花嫁の母親に生まれたときと同じ体重に作ったブラウンベアーのぬいぐるみを渡すのが静かなブームだという。私もかつて、キャンドルサービスは皆と同じで抵抗があり、『黄色いリボン』の曲に合わせてチューリップの花一輪を配ったりした。
 
 つい昨年末の後輩のウェディングは、広尾『アプローズ』という鉄製門が迎える洒落たレストランだった。ホームパーティのようなアットホームな雰囲気のなか、新婦お気に入りのゴスペルが奏でられ、食事も満喫できてホスピタリティマインドにあふれる設えであった。その少し前には、表参道『シェ松尾』にてフランス料理をいただきながらのウェディングパーティに参列した。様式美をモダンにアレンジした濃い茶の木目の豪華な家具に囲まれ、落ち着いて食事ができた。もはやレストランウェディングは定番となった。
 
 結婚適齢期の男女は減少しているし、結婚に縛られないシングル族も増加しているというが、意外にも昨年は127万組が挙式を行なっていて、なんとそのうち3割はどちらかがバツイチという時代の流れである。大きな宴会場よりは慎ましやかに、親族を中心に80人程度のホームパーティのスタイルでという希望がアンケート調査で半数以上を占めているとのこと。パーティニーズに応えるという観点からすると、施設自体はまだまだ不足しているのである。
 
 個人的にも次回パーティをする時には、六本木『ディープブルー』を貸切りにしてやりたい、などと思っている。一応内緒だが。
 

(あさだ けんじ/(株)丹青社 商空間事業部第4営業部 部長)

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