■コラム * tannet flash
ショップス・ニューウェイブ
朝田 賢治
有楽町で買いましょう
かつては巨人が優勝すれば、必ずその優勝セールにマスコミが取材殺到した「有楽町そごう」。過大投資と独裁専断カンパニーの崩壊から数年、2001年6月14日木曜日10時(曇天)、同地にカメラ系量販店ビッグカメラが新装開業した。東京、丸の内、新橋周辺のサラリーマン100万人超を対象に、チラシ作戦でロケットスタートを狙った派手なお披露目。初日の買い上げ客は13万人。その動員は、昨年9月のそごう閉店セール時の4倍弱であるという。
ビッグカメラは先に開店した立川店(駅前伊勢丹移転跡)、今回の有楽町そごう店、そして8月に札幌そごう跡と、一等地出店を続ける予定がある。また強力なライバルであるヨドバシカメラは11月、大阪梅田駅前に大型店を開店する。翌年にはJR博多駅前に九州旗艦店を出店予定だ。
カメラ屋さん?の従来概念を超越した品揃えの旗艦店は、徹底した大量現金買付けで高粗利率を確保。歴史が浅いがゆえに人件費も抑えられていることが勢いに拍車をかけている。このビッグカメラの銀座(有楽町)上陸は、最近外資ファッションが銀座を欧米化している潮流と同じだ。業態は違えど、店舗を構えるという表現方法において、銀座は彼らにとってもやはりヒノキ舞台なのである。
そごう時代は自慢の吹抜けだった1階のエスカレーターまわりは、商品と人で埋め尽くされ、クロスを貼っただけの共用柱も飾り気など微塵もないが、全く違和感なく環境に馴染んでいる。サイン以外に華美に飾る必要はなく、機能的で、多く陳列できれればいいだけの売場ポリシーの徹底。各フロアーのアイランド部分には特価のパソコン、その周辺機器などが床のPタイルじかにうずたかく積まれ、さながらスーパーのティッシュペーパーのように買われていく。そしてまた、なんの脈絡もなく2階では酒、3階ではおもちゃが売られている。得意分野は違うものの、蒲田のユザワヤ吉祥寺、津田沼出店を思い出した。
消費が翳っているとは言え、エンポリオアルマーニ、トラサルディ、ブルックスブラザーズなどが並ぶ丸の内仲通りはまだ活気があり、ルイヴィトン、シャネル、ティファニーなどが店を構える銀座の中心地も目と鼻の先である。「ビーク、ビクビク、ビックカメラッ!」と連呼する呼び込みのテープが流れようとは…。チラシに踊るポップなプライス表現、10%ポイント還元、支払い時のレシートに当たりをつけ、100人に1人が無料になるなど、消費者のハートを揺さ振る仕掛けが満載である。買いたいものが無くても足を運んでしまう強力な磁石のようなお店である。
かく言う私もリサーチのつもりが、あったらいいなでカラープリンターを買ったしまった。物ほしそうに眺めていたら、売り子さんが「そのNECピクティもヒューレットパッカードのOEMで、1000円お安くなっています」と。24000円もする買い物である。
戦後3Cと言う三種神器に憧れた昭和時代を駆け足で通過、今や耐久消費財という感覚は希薄になり、一家に複数のテレビ、ビデオ、クーラーは当たり前。伝統的な銀座の百貨店のMDは、9割近くを女性として捕らえ、外資中心の高級ファッションに極端なイメージシフトをしている。家電やスポーツ用品などの商品群は、扱いにくい男性ターゲット商品として、隅に追いやられた流れがある。しかしながらこうも話題をさらわれては商材こそバッティングしないものの、戦々恐々としているのでは。一応迎え撃ったかたちの既存百貨店数社では、松屋にしろ、三越にしろ、顧客を捕まえている一部のファッション・スーパーブランドの調子はいいと聞く。ただそれを除けばその実態は苦戦が続いているという。
売れなければ問屋かメーカーに返品すればいいという安易な考えが根底にあり、商品が軽視されていると思われても仕方がない。(「百貨店に明日はない」元三越常務、岩瀬敬一朗著)という状況が垣間見られ、果たして、商業地図は郊外のカルフール旋風と同様に書き換えられてしまうのか。否、棲み分けか、相乗か。
「他店より1円でも高い商品があったら店員までお申し付けください」とエスカレーター横にPOPが躍る。ああ、一度でいいから言ってみたいそのセリフ。ローンを払って手元に残ったボーナスを握り締め、ぼくらの夢を有楽町で買いましょう。
(あさだ けんじ/(株)丹青社 第1商空間事業部第1営業部 部長)
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