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■コラム * tannet flash ショップス・ニューウェイブ 朝田 賢治 ジョン・A・ジャーディと位置エネルギー
小雨降る北九州は小倉の地。4月19日は『リバーウォーク』の開店の日。傘を持たずに6時発の飛行機で九州に入りした私は、開店準備で忙しい京町商店街を足早にやり過ごし、業務用の大型封筒を雨よけに頭に翳し紫川を渡った。正面入口からドアを肘で押し、雨に濡れた封筒を左手に丸めて、いざ施設の中へ。…何故かそこは雨が降っていた。(…後半へつづく) ● 4月25日、六本木ヒルズが開店し、けやき坂通り、ウェストウォークに東西のブランドショップが並んだ。森ビルが17年間かけて完成させた再開発。年間1,700万人の日本人が海外に出かけるのに対し、4〜500万人しか外国人を呼び込めない日本を憂う、森稔社長の世紀を跨いだ東京大改造計画の未だ序章である。 日本経済はデフレスパイラルの中にあっても、ユーロやドルが高くなっても、欧米ファッションブランドは日本の主要都市で旗艦店を創り続けている。今時の女性は、100円ショップ『ダイソー』で口紅を、『ユニクロ』でパンツを買うけれども、『ルイ・ヴィトン』の50万円のバックも、一生ものだから、と惜しげもなくカードを切る。それらのお店はいずれも独自「ブランド」であることにより、ブランドエクイティ(資産価値)が異なる「位置エネルギー」で人々を誘う。 物質という概念は通常形が見えるものであり、質量を持ち、人が触れることが出来る。物質が持つエネルギーは抽象的な概念であり、エネルギーを観測できるのは、それが形を変えていく過程の中においてである。そして物質はその置かれている状況によってエネルギーを蓄えることが出来る。それを「位置エネルギー」という。その物質は内面にエネルギーを蓄えた状態で、いつでも仕事をする(人を惹きつける)能力を潜在的に持っている。「ブランド」はその存在を認知されていること自体で「位置エネルギー」を持っている。「ブランド」とはマークやロゴなどの商標に限らず、色彩であったり、香りであったり、味であったり、またライフスタイルであったり五感を刺激する事象すべてが構成要素となる。 「伝統とは革新の連続である」とは、虎屋の第17代当主、黒川光博社長の言葉。永年受け継がれている「ブランド」の条件とはイメージの訴求が独特であり一貫していること、そして何より最も重要なのは時代の流れに即応し、そのあるべき姿を実に巧緻に変化させているということ。六本木ヒルズの『Torayaカフェ』は人を惹きつける測定不能な「ブランド」エネルギーの塊なのである。 ● ![]() (・・・つづきから)『リバーウォーク』のドアを入ると北九州芸術劇場へのエントランス、そしてジョン・A・ジャーディのデザインの象徴、アレー(渓谷)であり、屋外であった。また、ジャーディにしてやられた、という気持が不思議と心地良く、胸が熱く、高鳴った。ジャーディというマニアな「ブランド」は「位置エネルギー」であり熱エネルギー。仕事を成し遂げる過程から既に熱を発していたようだ。 靄がかかる小倉城は、建物全体から陽炎のように湯気を上げ、ジャーディを、そして訪れる人々を歓迎していた。 (あさだ けんじ/(株)丹青社 商空間事業部 第3営業部 部長)
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