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ショップス・ニューウェイブ
朝田 賢治

インターネット書店と新古書店


 日経流通新聞8月22日の記事に「文教堂、勝ち残りへ攻勢」として、 "北海道最大手の書籍・文具チェーン、本の店岩本(札幌市)から既存2店舗の営業権譲り受けで基本合意"とあった。文教堂はこのM&A(企業買収)で出店ペースを上げ、一気に道内での基盤を確保しようという戦略だ。一方、"バーチャル(仮想)"店舗でも子会社ジェイブック(本社川崎市)がフジテレビの出資を受け入れ、TVキャラクターを活用したCDやDVD、出版物などで情報発信性を高めていく。"リアル"書店での基盤作り、また業界の枠を超えた協力体制など、文教堂流の生き残り対策が見える。

 不況知らずとされた出版業界だが、ここ3年連続で出版物販売額がマイナス成長。出版社、取次会社、書店の危機的なトリプル不況が囁かれ、再版制度と委託販売制度に支えられた近代流通システムは事実上崩壊しはじめている。地域密着型の中小書店を中心に、書店の閉鎖は3年連続1000店以上という。反面、書店の総売場面積は大型書籍チェーン主体に年10%ペースで増加、という現実が文教堂の買収劇で一層リアルに伝わってくる。

 書店業界再編の第一幕は、なんといっても米国アマゾン・ドットコムに代表されるインターネット書店(サイバー書店、バーチャル書店)の拡大だろう。『通信白書』99年度版によれば日本のネット利用者は1696万人、世帯普及率は11%と日本での商用サービス開始5年で1割を超えた。ネットを通じた消費者むけ電子商取引の99年の国内市場規模は3360億円に達し、うち書籍・音楽CDは70億円といわれる(電子商取引実証推進協議会調査)。さらに2004年に電子商取引は6兆7000億円に市場拡大するとされ、単純計算でも書籍・音楽CD分野の販売額は現在の約20倍、1400億円(業界1位の丸善の売上と同等)になる計算だ。

 日本ではアマゾン・ドットコムに遅れることわずか5ヶ月の95年12月、最大手丸善が書籍のインターネット販売を開始。続いて八重洲ブックセンターが96年10月に、そして紀伊国屋書店も同月に立ち上げ、以降は青山ブックセンター、文教堂、ジュンク堂が追随。99年8月にはヴィレッジヴァンガード、9月には三省堂書店もサービスを開始した。現在では、画面やブラウジングに工夫をこらした各社の特色あるコンテンツ、宅配システム、"リアル"店舗との融合サービスなど、完全にひとつの流れになったといえる。

 それに応じて、書店店頭のありようも変わってきている。先日、紀伊国屋書店の前を通ると、どこかで見たビジネス書がうずたかく積まれている。同社のネット書店で最近目にした売れ筋の本だ。ネット上では売りたい本の表紙を前面に出して印象づけ、"リアル"書店店頭も連動させる。バーチャルでもリアルでも購入できるようにと、プロモーション・購買チャネルが多様化してきているのだ。

 そして書店業界再編の第二幕を演出したのが、パイオニアである「ブックオフ」を筆頭とする新古書店の急成長だろう。特にブックオフは2000年8月時点で全国529店舗に拡大、4月には海外2店めのニューヨーク出店も実現した。このニューヨーク店など、ホームページ上で見るかぎりPOPも陳列の方法もまったく国内と同じで、米国在住日本人むけの本屋となっている。前を通る日本人の、10人中9人が中を覗いていくという。

 国内のブックオフを見るにつけ、その安くて量の多いことに驚く。コミックや文庫を中心に100円均一コーナーが充実し、もし隣に旧来の新刊書店があってもまったく競争にならないのではないか。さらに、つい1週間前に新刊書店の店頭で面陳列されていたような本が半額で売られているなど、従来の古本屋では絶対見られなかった棚の風景が展開されている。新しいものは半額で、古いものは100円でというコンセプトだそうで、仕入れも販売もマニュアル化されアルバイトとパートが店を運営している。つまりここには本に関するプロはいない。そんな店舗がもう間もなく全国津々浦々に行き届くことになる。まさに時代の流れを感じさせる店である。

 書店をとりまくこの2つの流通チャネル多様化の流れは、これからも止むことなく、新しいビジネスの形を生み出していくだろう。米国ではどのインターネット書店も20〜40%の値引きをしているうえ、ベストセラーを半額で売ってしまうなど既存の新刊書店では完全に太刀打ちできない状況を作り出しているという。当然のように値引き合戦が展開されるからである。再版制度の見直しやインターネット書店の拡大など、米国と同じ状況は日本でも当然予想される世界である。

バーチャルとリアル、価格勝負と付加価値勝負。これからが本当の生き残りをかけた勝負であるとは、なんと厳しいデジタル時代、そしてグローバル・スタンダードの訪れだろう。「店」という器が今後さまざまに変わっていかざるを得ないことを実感させられる。

(あさだ けんじ/(株)丹青社 第1営業統括部第1営業部 部長)

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