ケーススタディ
東京ディズニーシー

「ファンタジー」や「夢」「魔法」を織り込んだディズニー映画をテーマとする東京ディズニーランドとは異なり、“海にまつわる物語や伝説”を題材に「冒険」「ロマンス」「発見」の楽しさを提供する東京ディズニーシー。海がテーマのディズニーパークとしては世界初となる
 
“海にまつわる物語と伝説”をテーマにした
新ディズニーパーク誕生

データ

 (株)オリエンタルランドが手がける第2テーマパーク「東京ディズニーシー」が2001年9月4日、千葉県浦安市舞浜の「東京ディズニーランド」に隣接してオープンした。テーマは東京湾に面する立地特性を活かした「海にまつわる物語や伝説」となっている。
 パーク面積は47.8ha、うちパーク内の港や水路など全エリアの5分の1(約9ha)を水面積が占める。
 オリエンタルランドにザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーから「東京ディズニーシー」の基本コンセプトが提示されたのが今から約10年前。「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」の建設費も含めると総投資額は、約3380億円にものぼる。
 JR舞浜駅から「東京ディズニーシー」へはディズニーリゾートライン(今年7月から運行)で3つめの駅「東京ディズニーシー・ステーション」で下車。エントランス広場へ入ると"水の惑星地球"を表現したパークのシンボル「ディズニーシー・アクアスフィア」が目をひく。直径8mのこの球体は大きな水の柱の上で回転し、表面を伝う水が波打ちながら流れ落ちており、その先に広がる冒険の世界への導入部分としての役割を担う。
 
 パーク内は7つのテーマポート(寄港地)で構成されている。ロマンティックな南欧の古き港町メディテレーニアンハーバー、20世紀初頭のニューヨークとケープコッドの2つの趣が異なる港を再現したアメリカンウォーターフロント、時空を超えた未来のマリーナ、ポートディスカバリー、中央アメリカのジャングルで古代文明の謎に立ち向かうロストリバーデルタ、アラビアンナイトのエキゾチックな雰囲気のアラビアンコースト、ディズニー映画『リトル・マーメイド』の世界で人魚姫アリエルやその仲間たちと賑やかな海の世界を楽しめるマーメイドラグーン、活火山の奥深く謎の天才科学者ネモ船長が導く数々の冒険への扉が隠されたミステリアスアイランドである。
 
 各エリアの空間特性を際立たせているのが、それぞれの建築的特徴である。たとえば、メディテレーニアンハーバーではイタリア・ヴェネツィアをイメージした水路と著名なヴェネツィアの建物や橋、アメリカンウォーターフロントでは1912年のニューヨークの街や港と20世紀初頭にニューイングランド地方でみられた趣ある漁村の家並み。なかでも港に停泊している「S.S.コロンビア号」は実在した当時の豪華客船のデザインを採用した本格的な造りとなっている。ポートディスカバリーでは現代建築の常識を覆すような技術を駆使した独創的なデザインの建物群、ロストリバーデルタでは風雨に侵食された木製の建物、メキシコ南部の古代都市や寺院遺跡をもとにした巨大な石の神殿、アラビアンコーストでは紀元1200年ごろのイスラム建築様式や装飾を採用した波止場や市場、宮殿をそれぞれ特徴とする。またマーメイドラグーンではファンタジックな珊瑚の宮殿をイメージしたキング・トリトン・キャッスル、ミステリアスアイランドではフランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの小説の世界観にヒントを得た謎の天才科学者が造ったとする秘密基地が目をひく。中央に位置するプロメテウス火山は高さ51m。定期的に炎を噴出する雄雄しい姿はほとんどのエリアから眺めることができ、パークのランドマークとなっている。
 
 アトラクション施設は23。なかでも「ストームライダー」「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮」「マーメイドラグーンシアター」「海底2万マイル」「センター・オブ・ジ・アース」などが目玉アトラクションとして注目されている。
 ライブパフォーマンスは、メディテレーニアンハーバー全体を巨大なステージに上演される「ポルト・パラディーゾ・ウォーターカーニバル」、同じく夜間のメディテレーニアンハーバーで水上を舞台に上演される「ディズニーシー・シンフォニー」、ブロードウェイ・ミュージックシアターで催される本格的ミュージカル「アンコール!」など計7種類、ほか随時ストリートパフォーマーたちによるユニークなパフォーマンス計26プログラムを用意している。(開業時)
 
 飲食施設は、気軽に利用できるカウンタースタイルからバフェテリア、ブッフェ、落ち着いた雰囲気のテーブルサービスまで計33店舗が用意され、そのうちテーブルサービス6店舗(ラウンジ2店舗含む)、バフェテリアサービス3店舗、ブッフェスタイル1店舗の計10店舗でアルコール飲料を提供する。
 
 東京ディズニーシーのもうひとつの大きな特徴がパーク一体型ホテル「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」である。パーク玄関口にあたるメディテレーニアンハーバーに位置し、地中海に面したイタリアをテーマに18世紀から19世紀にかけてのエレガントなイタリア建築様式と装飾が取り入れられた。内装には「海」をテーマに海にまつわる生き物やディズニーキャラクターがさりげなく組み込まれている。
 ホテルは地上5階建て(1階はパークと共有)、全502室。4つの料飲施設のほか「チャペル・ミラコスタ」をはじめ大・中・小の計5室の宴会場、ブライダルサロン等の婚礼・宴会施設も用意され、エンターテインメント性あふれるディズニーブランド挙式「ディズニー・フェアリーテイル・ウェディング」の舞台となる。
 東京ディズニーシーと東京ディズニーシー・ホテルミラコスタの開業により、東京ディズニーリゾートは一大テーマリゾートとして新たにスタートを切った。
 
 オリエンタルランドでは東京ディズニーランドと合わせ両パークの年間入園者数約2,500万人を見込んでいる。オープン後の傾向をみると、東京ディズニーシー開業によるマイナス影響が心配されていた東京ディズニーランドが予想以上に集客を伸ばし、上期の入場者数は両パーク合計で当初計画を約92万人上回る929万9,000人を記録するなど好調なスタートを切っている。
 


 
小松 史郎氏/(株)三菱総合研究所 地域政策研究センター 研究部長
 
東京ディズニーシーをどうみるか
 

 2001年9月、「東京ディズニーシー」(以下、TDSと略)がオープンした。集客の落ち込む夏休み直後のオープンを見事に克服し、ほぼ予定どおりの集客を続けている。特に当初心配されていた「東京ディズニーランド」(以下、TDLと略)の落ち込みも少なく、予想どおりのバランスで推移している模様である。
 
TDSを見た人の評価
 TDSを見た人の評価は「TDLより面白くない」派と「TDLより面白い」派の真っ二つに分かれている。
前者はTDLのヘビーファンとスリルライドファンに多く見られる傾向である。割合としては、たぶん前者のほうが高いのではなかろうか。後者はTDLのライトファンとTDLはもう飽きたという人やあまり好きではないという人達である。「面白くない」派の人たちが指摘するポイントは2つあって、1つはミッキーやミニーにあまり出逢えないこと、プーさんがいないことである。2つめは、スリル系アトラクションが物足りないことである。「センター・オブ・ジ・アース」や「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」はTDLの3マウンテン(スペース・マウンテン、ビッグサンダー・マウンテン、スプラッシュ・マウンテン)より迫力がなくて面白くないというものである。
 これに対して「面白い」派の人たちが指摘するポイントも2つある。1つは「ライブショーが面白い」という指摘である。本場ブロードウェイのミュージカルを楽しめる「アンコール!」や「マーメイドラグーンシアター」「ミスティック・リズム」は、確かにTDLにはないクオリティの高いショーである。2つめは、火山、海、街並みから構成された美しい景観である。「歩いているだけで楽しい」という非日常空間の出来はさすがである。特に「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」のエージング技術は素晴らしいが、パステルカラーの好きなTDLの熱狂的ファンには評判がよくない。そんな人のためには「マーメイドラグーン」や「アラビアンコースト」が隣り合って造られているところも、またさすがである。
 
TDSはTDLのライバルパーク
 このようにTDLに比べてTDSの評価が分かれていることこそ、TDSの狙い所である。TDSは、第1パークであるTDLの集客容量の限界とゲストの固定化という課題を解消するために第2パークとして計画されてきたものである。比較的早い時期から第1パークのTDLとは違う新しい方向のテーマパークを目指そうとしていた。第2パークを第1パークの延長ではなくライバルとすることで、ゲストの固定化の課題を解決するとともに、隣接するTDLとの相乗効果を狙っているのである。このため、TDLへの思い入れによってTDSの評価は分かれて当然なのである。
 TDSがTDLと差別化する際に重視したポイントは、大きく3つある。
 1つは滞在型アーバンリゾートへのこだわりである。(株)オリエンタルランドは、舞浜の施設全体を東京ディズニーリゾートと改名するとともに、宿泊客を現在の3割から5割へ増やそうとしている。宿泊客が5割になることは、日帰り圏である首都圏からも泊りがけで遊びに来るアーバンリゾート客を大幅に増やす計画である。これは日本人のレジャースタイルの変革と新しい市場の創造を意味する。TDSはこの宿泊客にいかにゆったり楽しんでもらえるかに腐心している。火山や海などゲストゾーンを少なくしてまで景観に莫大な投資をしているのは、このためである。
 2つめは、メインターゲットを若者から中高年まで拡げようとしていることである。今後、少子高齢化が進むなかでテーマパークとして当然考えるべき方向であり、子供を育てあげた夫婦をリピートさせる戦略としても重要であるが、その具体像は必ずしも明確でなかった。TDSはその一つのモデルプランを提示していると見ることができる。
 3つめは、アトラクションからライブショーへのシフトである。このシフトは20世紀のテーマパークがライドやロボットのような科学技術によって人を感動させてきたのに対して、21世紀は“人”でなければできない、より深い感動を提供する形にテーマパークが進化する一つの流れとみてよい。これは中高年戦略であると同時に、アーバンリゾート戦略としても意味がある。
 
 いずれにしても、TDSは始まったばかりで、まだ開発途上にある。今見えている形はTDSの全貌ではない。はっきりとTDSの本質が見えるまで4、5年はかかるとみてよい。その行方を考えるには、夫婦(恋人のほうがもっとよい)で「ホテルミラコスタ」に泊り、「アンコール!」だけ見てマゼランで上等のワインを飲みながらフランス料理を食べたあと、翌日の朝にホテルのロビーラウンジでコーヒーを飲みながら、朝一番に人気アトラクションをめがけて走っていく人々を「違うんだよなあ」と思いつつ眺めることが必要である。
 

(2001年12月)


データ 2001年12月現在

[施設名] 東京ディズニーシー
[所在地] 千葉県浦安市舞浜1-1
[オープン] 2001年9月4日
[事業主体] (株)オリエンタルランド
[敷地面積] 71.4ha(パーク47.8ha[うち水面積9.2ha]、駐車場10.9ha、その他12.7ha)
[エリア構成] メディテレーニアンハーバー/アメリカンウォーターフロント/ポートディスカバリー/ロストリバーデルタ/アラビアンコースト/マーメイドラグーン/ミステリアスアイランド
[施設構成] アトラクション23/飲食33/物販32
[駐車場] 約6,500台(「東京ディズニーシー」専用約4,000台、「東京ディズニーランド」との共用約2,500台)
[総事業費] 約3,380億円(「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」建設費含む)
[利用料金/
スタジオ・パス(個人)]
●1デーパスポート
大人(18歳〜)5,500円、中人(12〜17歳)4,800円、子ども(4〜11歳)3,700円、シニア(60歳〜)4,800円
●2デーパスポート
大人9,800円、中人8,600円、子ども6,700円
●3デーパスポート
大人13,700円、中人12,000円、子ども9,300円
●4デーパスポート
大人17,200円、中人15,100円、子ども11,600円
[入場者目標] 年間約1,000万人
[集客目標] 約2,500万人(「東京ディズニーランド」との合計)



 
施設配置図
1.ディズニーシー・トランジットスチーマーライン
2.ヴェネツィアン・ゴンドラ
3.フォートレス・エクスプロレーション
4.センター・オブ・ジ・アース
5.海底2万マイル
6.ビッグシティ・ヴィークル
7.ディズニーシー・エレクトリックレールウェイ
8.ストームライダー
9.アクアトピア
10.インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:
  クリスタルスカルの魔宮
11.シンドバッド・セブンヴォヤッジ
12.マジックランプシアター
13.キャラバンカルーセル
14.フランダーのフライングフィッシュコースター
15.スカットルのスクーター
16.マーメイドラグーンシアター
17.ジャンピン・ジェリーフィッシュ
18.ブローフィッシュ・バルーンレース
19.ワールプール
20.アリエルのプレイグラウンド
21.プロメテウス火山
22.豪華客船「S.Sコロンビア号」
23.東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ
24.ディズニーシー・プラザ
25.東京ディズニーシー・ステーション
26.ディズニーリゾートライン

 
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