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■ケーススタディ ノーマライゼーション やさしさとデザイン
ハンディキャッパーの自立と支援 1990年、「障害を持つアメリカ人法(American with Disabilities Act=略称 ADA)」が設立された。そのとき、ADAの生みの親といわれる障害援助活動家のジャスティン・ダート氏は、「障害を持つ人が職を得ることができれば、収入も増え、消費者としても力をもつことになる」と語ったという。 そのときから「税金によって生活していた人が、職を得ることによって税金を納める存在になった」。障害のある人もない人も、同じように普通の生活を送る、これがノーマライゼーションの本質である。 このノーマライゼーションという概念にしたがって、私たちも「障害」に対する「やさしさ」や「道徳観」を変えなければならないだろう。健常者が当然のようにもつ欲求や嗜好は、障害者や痴呆症の患者でも同じようにもっているものである。障害者だからといって特別視したり、特別な扱いをしたりすることは、必ずしも障害者に対するやさしさとイコールではない。 最近では、バリアフリーの考え方を超えて、ユニバーサルデザインに代表されるような、「障害の有無に関係なく自然に使える美しいデザイン」が評価される時代になりつつある。これはデザインの世界のノーマライゼーションである。 いまの時代、私たちは何をすることができるのか、真摯に考えてみたい。 ● ヤマト福祉財団による二つの試み スワンカフェ 銀座店 健常者とパートナーで社会参加へのモチベーションを高める試み ヤマト福祉財団が、障害者の雇用、収入の確保、自立支援、社会参加などの目的をもって設立した(株)スワンが展開。パン製造販売チェーン店「スワンベーカリー」の第1号店である銀座店に隣接して、2002年10月に開業した。現在、ベーカリーは7店、カフェは2店を出店。 昭和通りに面したファサードは全面ガラス張りで床はフローリング。正面は注文を受けるカウンターとキッチンを並べて配置し、両サイドのクリームイエローの壁にはモノクロームのポートレートや外国の街を撮影した写真が数葉飾られている。明るく健康的なイメージと落ち着いた雰囲気を併せもち、客ばかりでなくスタッフにも居心地のよい空間になっている。 メニューは、オリジナル・レシピでブレンドしたシアトル系コーヒーのほか、ディナータイムにはワインやカクテルなどのアルコールも販売。ホームメイドのサンドイッチをはじめ、一品料理やサラダ、スープなどフードメニューの充実を図っている。 同店はセルフサービスのカフェではなく、ウェイトレスがオーダーされたものを運び、後片付けを行なう。ここでは健常者と障害者がチームとなり、お互いにパートナーとしてサポートし励ましあいながら、フロアやキッチンで働いている。障害があってもなくても、人間として労働する喜びを得られる環境を整えることで、自立や社会参加に対するモチベーションも高まる。同店は、ノーマライゼーションを実践するモデルショップとして注目される。
● カリタスの家 炭焼きを通じて障害者に働く喜びを感じてもらう 働き、ものをつくり、それが売れることで得られる喜び……、健常者であれば誰もが感じることのできる、働く喜びを障害者にも与えてあげたい。そんな思いからスタートしたのが、福岡県嘉穂郡頴田町の知的障害者更生施設「カリタスの家」で行なわれている炭焼きである。 カリタスの家は、福岡県でも障害の重い人たちを対象とする施設で、遠賀川上流の飯塚市郊外にあたる、緑豊かな住宅地の高台に位置する。ここに「凛光窯」と名づけられた炭焼き窯がつくられたのは、2001年7月のこと。障害者が働くための具体的な支援をしていこうと設立されたヤマト運輸(株)の子会社、(株)スワンネットのプロデュースを受けけて開設されたものである。同時に同社が、ここで焼かれた炭を買上げ、ヤマト運輸の全国ネットの宅急便ネットワークを活かして一般に販売していくという流通ルートも確立している。 「障害者になぜ炭焼きがいいかというと、シンプルで短い作業が連続して行なえるからです。木を決まった長さに切る、それを運ぶ、窯に詰めるというように、短い作業を繰り返し、積み重ねていくことで炭は完成します。どんなに障害の重い人でも、切っている木を押さえているということはできる。それもひとつの作業になるのです」(指導部長・原田秀樹氏)。 ここではそうやって、比較的障害の軽い人が重い人を助けながら、班による作業分担が行なわれている。日々の作業を繰り返しているうちに、それまで木を押さえることしかできなかった人が進んでノコギリをもち、木を切るようになるのだという。 実際には言葉でいうほど簡単なことではないのだろうが、「やはり障害者も、私たちと同じように働きたいのです。毎日、10分でも15分でもいいから仕事に出て働くことで生活のリズムも生まれる。それは健常者でも障害者でも同じ、大切なことなのです」(原田氏)。そして、もっと重要なのは、それが売れるということだ。いくら目標が立派でも、売れないものをつくり続けていては、やがて意欲すら失ってしまう。自分たちがつくったものを買ってくれる=必要としてくれる人がいて、はじめて喜びが生まれる。その結果として報酬があるのだ。 「これはあなたが働いたものだよ、といって手渡してあげれば、誰でも嬉しいものです。その点で、スワンネットさんが販売を担当してくださることの意義は非常に大きいと思っています。近隣から炭焼きの臭い対策を求められ、高額な脱臭装置を据え付けざるを得なかったため、そのリース料の負担が重い。このリース料の支払いが終われば採算に乗せられるので、そのときを楽しみに、いまは、がんばっています。やがては障害者がその報酬で生活していけるようになるのが理想です」。 そのためにも、いま、炭を焼くことで生じる灰や炭粉などを利用した石鹸やシャンプーなど、カリタスの家ブランドのオリジナル商品を開発し、独自の販売ルートの開拓にもチャレンジしている。「障害者がつくったものだからということではなく、一般の商品と同じように売れるものにしていきたい」(原田氏)と、炭焼きを契機に、次なる目標がどんどんと生まれている。
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