ケーススタディ
北九州市立 自然史・歴史博物館 いのちのたび博物館

自然史・歴史・考古の3館を統合し
「人と自然の共生」をテーマに
誰もが親しめるミュージアムに再構築

データ

 2002年11月に開館した「北九州市立 自然史・歴史博物館」(愛称:いのちのたび博物館)は、小倉と黒崎の中間に位置する八幡東田地区に立地する。同地区では現在、産業・文化・生活が融合した魅力的なまちづくりを目指す「八幡東田総合開発」が進められており、その計画のもと、同地を文化施設の集積拠点とする方針が打ち出されている。具体的には、「自然史」「歴史」「環境」「産業科学」という4つのテーマで、博物館を段階的に整備していく「SHINE博物館構想」が掲げられ、同博物館のオープン前の4月には、「環境ミュージアム」が開設されている。
 
 同館は、その環境ミュージアムの隣接地に建設されたもの。もともと北九州市には歴史博物館、自然史博物館、考古博物館の3館があったが、今回の計画は、SHINE博物館構想に基づいて、それまで別々に存在していた3つの博物館を「人と自然の共生」というテーマで統合、再構築しようというもので、末吉市長によれば「ワシントンのスミソニアン博物館のようにしたい」との思いがあったという。
 
 また、この後には「産業科学博物館」の開設も予定されており、「ここには官営八幡製鉄所の第一号高炉という近代遺産もありますし、将来的にエリア全体でミュージアムコンプレックスを形成」(同館普及係長・久保田裕明氏)し、同館もその一翼を担うことになる。
このミュージアムコンプレックスという考え方は、同館の施設づくりにおいてもコンセプトとして活かされている。
 
 ショッピングセンターをイメージモデルとして想定したという館内には、中央部を貫くように100mに及ぶ吹抜けの直線回廊「アースモール」が伸び、幕張メッセで開催され話題を呼んだ「世界最大の恐竜博」にも展示されていたセイスモサウルスやティラノサウルスといった大型恐竜の全身骨格をはじめ、地球の形成から、地球上に多様な生命が満ち溢れるまでをタイムスケールに沿って展示する空間となっている。
 
 この巨大な吹抜け空間を軸に、大きくは、自然と生命の歴史を約4,500点の資料とともに紹介する自然史ゾーンと、北九州地域の歴史と人々の暮らしの変遷にテーマを当てた歴史ゾーンで構成。さらに、約1億2,000万年前の北九州地域の環境を恐竜ロボットや小動物模型などを駆使して360度体感型のジオラマとして再現した「エンバイラマ館」、北九州の自然や生物を模型と標本、ジオラマで紹介する「自然発見館」、旧石器時代から近現代までの歴史を資料、ジオラマ、映像などをまじえて展示した「テーマ館」、弥生時代の竪穴住居と昭和30年代の八幡製鉄所の社宅を原寸大再現した大型展示空間「探求館」、そして小倉、戸畑、黒崎の祇園の山車を一堂に集めた「カルチャーモール」などを多層的に組み合わせた構造となっている。
 
 また、SCに多様な専門店が集まっているように、学芸員が自分の研究成果を展示するための「ぽけっとミュージアム」が、アースモールやカルチャーモールに“出店”する形で並んでいたり、恐竜の全身骨格をグラウンドレベルで見ることのできる仕掛けがあったりと、新しい展示の工夫を随所に発見できる。
 同時に、利用者にとって親しみのある博物館を目指すという方針から、楽しみながら知る・考える・学ぶことのできるエンターテインメント性の高い展示内容となっており、一方で、もっと深く知りたいという人には、実物化石や標本等による解説を通して学べる「リサーチゾーン」が用意されている。したがってここには、博物館につきものの「順路」がない。利用者は、自分の興味のおもむくままに館内を見て歩けばよい。「エンバイラマ館だけ見て帰られてもいいですし、知識を学びに来られる方にも十分対応できるようになっています。どう利用するかは利用者が決めることですし、そこから自然といろいろな方面に関心をもつようになっていただけば、3つの館を統合した意味も出てくると思います」(久保田氏)
 
 いわば、全体としてのテーマを通しながらも、それぞれの展示を独立しても楽しめるホロニックな構造となっているわけで、その意味で、まさに館自体がミュージアムコップレックスを具現化している。
 


データ 2003年4月現在

[所在地] 福岡県北九州市八幡東区東田2-4-1
[オープン] 2002年11月3日
[事業主体] 北九州市
[運営主体] 北九州市
[敷地面積] 約31,000m2
[構造・規模] RC造・地上3階建
[延床面積] 約17,000m2
[展示面積] 約6,000m2
[施設内容] ●自然史ゾーン
アースモール/エンバイラマ館/生命の多様性館/自然発見館
●歴史ゾーン
カルチャーモール/テーマ館/探求館
●共用施設
ガイド館/ギャラリー館/こども館/情報館/講座室/実習室/休憩ルーム/休憩デッキ/ミュージアムショップ
[総事業費] 170億円
[入館料] 大人500円、大学・高校生300円、小・中学生200円
※30名以上の団体は2割引
[開館時間] 9:00〜17:00
[休館日] 年末年始
[集客目標] 30万人

[戻る]

このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。
Copyright 2003 TANSEISHA.co.,ltd.
All right reserved.