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■ケーススタディ スウェーデンにみるやさしさのデザイン
使う人のことを徹底して考えた 1960年代、世界で一足早く高齢化社会を迎えたスウェーデンでは、高齢者や障害者にとってやさしく、使いやすいデザインの機器開発が積極的に進められてきた。高齢者であれ障害者であれ、同じ1人の人間として自立して幸せな生活を送れるべきだ、という理念のもと、行政も、障害者の日常生活をサポートできる器具の開発を推進するために、69年に国立障害研究所を設立。人間工学に基づいた評価を行なうことで、メーカーが有用な製品を世に送り出すうえで大きな役割を果たしてきた。 エルゴノミデザイン社は、その障害研究所と同じ頃に設立された、工業デザイン・コンサルタント会社である。当初は、障害研究所と共同で福祉機器の開発なども手がけてきたが、いまではユニバーサルデザインを基本に、さまざまな商品の開発、デザインを行なっている。昨年9月には、日本法人、エルゴノミデザイン・ジャパン(株)も設立された。
「大切なのは、それを使う人たちが本当に求めているのは何かということです。多くの場合、製品開発がはじまった段階でモニターをすることが多いようですが、私どもは、まずデザインをする前にユーザーの本当のニーズがどこにあるのかを徹底して調査します。そのうえで、人間工学、エンジニアリングに基づいてベストといえる機能をデザインしていくのです」。 だから同社の開発した製品は、20年以上にわたってモデルチェンジすることなく、ずっと生産されつづけている。「人間の形が変わらない限り、デザインを変える必要がない」からだ。 同社はまた、機能性だけでなく、見た目にも美しいデザインにこだわりつづける。よく、デザインに引かれて購入してみたが、意外と使いにくいという経験をすることがあるが、同社の場合は、使いやすい、使っていて疲れない、安全という機能面とデザイン性を完全に共存できるという信念をもっている。 「デザインというのは誰にとっても魅力的なものなのです。障害者であれ、高齢者であれ、美しいデザインのものが欲しいと思うのは共通の心理です。あなたが、もし明日から車椅子の生活を余儀なくされたとしたら(誰にでもその可能性はあります)、いまの車椅子で満足できますか。人の感性は、たとえ車椅子の生活になったからといって変わるものではありません。それを高齢者に置き換えてみても同じです。美しいものを使うことで、使う喜びや楽しさも生まれます」。 たしかに“高齢者向け”を謳った商品はあまり売れない。「でも、使いやすくてカッコいいものがあれば誰でも欲しいと思うでしょう。年をとったから、障害者だから、こういうモノしかないという、人のプライドを落としてしまうようなことはおかしい、というのが私どもの考え方です」。 もちろん、それは健常者にとっても同じである。使う人にとって最も使いやすく、美しいデザイン。そんなモノが街の中にたくさん見られるようになればうれしいと思う。
関連サイト/エルゴノミデザイン社 [ 特別寄稿 ] スウェーデンに見る老人介護施設・障害者施設の現状 澤 宜人氏/株式会社エー・ピー・オー・専務取締役
そして一方では、日本の10年先、いや20年先を歩む高福祉国家(高齢者保護、障害者保護)ともいえるのではないでしょうか。福祉国家としての理念、民主主義社会の形成という、人々が穏やかに暮らすために、社会的弱者に属する人達への平等な生活条件と完全な社会参加への実現を求めて改革を続けてきました。その背景に、「老若男女や強弱に関わらず誰一人として他に劣るものはいない」という信念がこの国に広く浸透しているからでしょう。1992年には、長期的医療ニーズをもつ高齢者や障害者への医療サービスの行政責任を県(Landsting)から、より身近なKommunに移行する「エーデル改革」という大きな行政改革が実施されました。他方では、脱施設化、社会的入院の解消、福祉と医療の統合、ケアサービスへのアクセス改善とともに、資源の有効活用や地方自治体間の事業連携など、強化する重要な施策を行なっています。 Swedenには、「人間らしく生きる、地域社会と共に生きる、自然循環の中で生きる」、という考え方を政治システムと社会システムの中で、より完成度の高いレベルで具体化している福祉施設を数多く見ることが出来ます。それは、前述した考え方をベースにして施設を創り上げているからでしょう。つまり、老人であれ、障害者であれ、1人の人間としての尊厳を守りつつ、いかに快適に人生を生きることが出来るかが目指されているからです。その考え方は、変化の激しい時代にあっても、常に変わることのない根源的な姿勢といえるのです。より身近なサービスを誰もが平等に受けられるための細やかなシステムと実施のための権限が身近な自治体に委譲されたことにより、多くのケアサービスが温かく、日常的に、そして医学的に実施されていることには驚かされます。 私が初めてStockholmの土を踏んでから早くも25年が過ぎようとしていますが、その施設づくりの考え方に微塵の不安も感じないのは、そうした揺るぎない姿勢があるからでしょう。サービスハウスやナーシングホーム、グループホーム、老人ホームなどであっても基本的な考え方は同じで、人間としての尊厳を守る、自立した生活を可能な限り続ける、という強い信念に根ざしているからなのです。 そのいくつかの具体例を、シルバーホームにみてみましょう。 多くの施設では、そこに入居する老人や障害者の人体的機能性を優先しがちですが、むしろここでは、1人の人間としての価値観を優先して考えています。例えば、各自の部屋には必ず玄関あるいは玄関を意識した設えがあります。また台所ないしはミニキッチン設備やWC併設のシャワーブースの設置、個人の持込み家具等を置ける空間の確保など、介護法の研究に基づきながらも、快適な日常生活を営めるような配慮が随所になされています。これは、残存能力を最大限に生かす、もしくは積極的に働きかけるという意識付けを具体的に行なえるスペースの確保が重要であると考えるからです。 インテリアデザインを見ても、最も重要な人間工学に基づいたスケールと機能を有しつつ、温かみのある素材(木材としてブナ材、樺材などを多用)を巧みに利用し、絶妙な色と光のバランスで計画されています(ほとんどの場合、住居空間については白熱球を使用し、スタンドなどによる間接照明としています)。床の色は出来るだけ同色で統一し、それも明るい色を使用しています。たとえば壁の色は赤系統の色を採用し、カーテンやソファ等の張り生地(黄色やオレンジ色など)も同様です。特に痴呆症については、そうした色彩計画は重要な要素です。またイスのカバー等は取り外しができ、家具類は車椅子で利用できる高さに調節しています。さらには、様々な設備機器や配管ルートも含めて、当初よりリニューアルが容易に出来るように考えられてもいるのです。 世界で最も質の高いレベルの福祉サービスを提供しているSwedenにおいても、時代と共にそのサービスの提供方法に変化が現われています。政府から民間への運営委託や、老人介護事業の活性化により、ホームの環境づくりを積極的に推進しているのです。しかしながら、高齢者介護の基本は、家族が居る、居ないに関わらず自立して生きることが大前提であり、万人が社会サービス法により、そのサービスを受ける権利を平等に有するという保障は変わらないのです。 わが国でも、高齢者へのサービスとその質的向上が望まれているいま、Swedenに大いに学ぶ必要があると思われます。
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