ケーススタディ
鹿児島県上野原縄文の森

36haの広大な敷地に広がる縄文ワールド
自由な発想で、それぞれの“古代”を体験する環境づくりを志向

データ

  国分市街地から南東約2キロメートルに位置する上野原台地。鹿児島県はテクノポリス構想に基づき、国分上野原テクノパークを計画した。同地で、約9500年前(縄文早期前葉)の竪穴住居跡や集石遺構、連穴土坑などからなる集落遺跡が発見されたのは97年のことだった。これは、南九州地域における定住化の様相を典型的に示す集落跡として、大きな話題を呼んだ。また、この遺跡が発見された「第4工区」に隣接する「第3工区」からも、約7500年前(縄文早期後葉)の遺物が出土しており、集落遺跡は国指定史跡に、第3工区の出土品は国指定重要文化財にそれぞれ指定され、遺跡の公開も行なわれていた。
 
 鹿児島県では、この歴史文化遺産を保存・活用し、多くの人が「縄文の世界と向き合い、ふれあい・学び・親しむ場とする」ための整備を決定。98年度に基本構想・基本計画を策定して進め、今年10月に開園したのが「上野原縄文の森」である。  約36ヘクタールに及ぶ園内は大きく「見学エリア」と「体験エリア」に分かれ、落葉広葉樹に彩られた見学エリアには、メイン施設である「縄文の森展示館」のほか、発見当時の遺跡をそのまま見ることのできる「遺跡保存館」や調査をもとに想定復元された「復元集落」、上野原台地の地層が見られる「地層観察館」が開設されている。
 
 展示館は、円形の3階建ての構造で、「ソラの間」と名づけられた中央の吹抜けを核に、3室からなる常設展示室、企画展示室、縄文シアターなどを配している。展示は上野原遺跡の重要文化財の出土品を中心に、広く南九州一帯に広がっていた縄文の世界をテーマに、ジオラマや模型、映像、体験型の展示を行ない、わかりやすく、動きのある要素が盛り込まれた内容になっている。
 
 その展示館と歩道橋でつながれた埋蔵文化財センターが位置する体験エリアは、火おこしや勾玉づくりなどの古代生活体験のできる「体験学習館」や、県内各地で発見された縄文から古墳時代にかけての復元住居である「古代家屋群」、多目的に使用できる「祭りの広場」「展望の丘」などが整備され、埋蔵文化財センターでは出土品の整理作業の現場や収蔵庫が公開され、誰でも見学できるようになっている。
 
 これだけの規模と内容を備えているだけに、いろいろと幅広い利用の仕方が考えられるが、同園副園長の内村正弘氏は「何度も足を運んで末長く利用していただくためには、できるだけ自由な発想で、それぞれの方が自分なりに楽しんでもらう」ことが大切だという。こうした文化施設は、えてして情報や知識の一方的な発信になりがちだが、「学問的に厳密に説明していこうとすると、それだけ人の自由な感じ方やイマジネーションを束縛することになります。人には人それぞれの感じ方があり、理解の仕方があるわけですから、こうでなければならないという押し付け的な提供の仕方をすべきではないと思うのです」と、利用者の主体性を尊重する運営の仕方をしている。
 
 体験プログラムなども、「こちらが手取り足取り教えるようなものにはしたくないのです。私どもの役割は、あくまでもひとつのきっかけを提供するということで、それをどのように楽しんだり、発想を広げたりするかは、子どもや参加する方々が自由にやっていけばいいことです。むしろ、私どもはそうして生まれたアイデアや情報を他の人にも伝えていくようなレシピづくりに、これから本格的に取り組んでいかなければならないと考えています」
 
 プログラムではなくレシピだというところに、その思いが端的に現われているようで、たしかに料理は、調理する人によって、でき上がりも味付けもみな違う。それがそのままその人の個性でもあるとすれば、マニュアル化された体験プログラムや知識の伝達では個性も創造性も養うことはできないだろう。
 
 むしろ、もっともらしく教えたり、指導したりすることのほうがおかしいのだとも、内村氏は指摘する。「ここは学問をする場ではない、ということをはっきりさせておきたいのです。音楽を知識として学ぶことよりも、音楽を聴いて感動できることのほうが大切なのと同じで、それをどう受け止めるか、そして自分はどうするかという精神的な豊かさを育む場でありたいと願っています」
 
 見方を変えれば、利用者を束縛することは施設のあり方を束縛することでもあるのではないか、という重要な問いかけが含まれているのである。
 


データ 2002年12月現在

[所在地] 鹿児島県国分市川内1376-1
[連絡先] TEL.0995-48-5701
[オープン] 2002年10月5日
[事業主体] 鹿児島県
[運営主体] (財)鹿児島県文化振興財団
[敷地面積] 約36ha
[施設内容] 上野原縄文の森展示館:常設展示室1〜3(704m2)、企画展示室(161m2)、縄文シアター(226m2)、ソラの間、ウズの間、多目的ルーム、レストラン・ショップ、展望所
県立埋蔵文化財センター/地層観察館/遺跡保存館/復元集落/体験学習館/古代家屋群/展望の丘/祭りの広場/アスレチック
[総事業費] 124億円
[観覧料] 大人300(240)円、高・大学生210(160)円、小・中学生150(120)円、( )内は20名以上の団体料金
[開園時間] 9:00〜17:00(7月1日〜8月31日は9:00〜19:00)
[休園日] 毎週月曜日(祝日の場合は翌日。但し平成14年度は毎月第1、3月曜日)
12月30日〜1月1日、4月29日〜5月5日及び7月21日〜8月31日は無休

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