ケーススタディ

 
大本山永平寺 瑠璃聖宝閣

免震構造と最新の収蔵設備で文化財を保護
展示室もバリアフリー化で利便性を図る


  永平寺への参道にあたる道を上っていくと、正面に、新装なった瑠璃聖宝閣(しょうほうかく)が緑の木立に囲まれた姿を現わす。正門(龍門)の左手にあたる位置だ。
 
 参考までに触れておけば、大本山 永平寺は全国に1万5000の末寺をもつ曹洞宗の大本山で、開祖道元禅師が坐禅修行の場として建立。以来、約700年にわたって禅師の教えを受け継ぎ、いまでも当時と同じ方法で修行が行なわれていることでも有名。老杉に囲まれた約 30haの寺域に仏殿、法堂を中心とした 70余の建物を有している。

早春の永平寺瑠璃聖宝閣
photo●SS北陸 竹内雄二
 
 瑠璃聖宝閣は、昭和43年に永平寺の宝物を展示する施設として建設され、61年には五葉関(行者寮や機関誌「傘松」の編集室、図書室などからなる建物)の新築と合わせて改築されている。
 
 今回の改築は、国宝・重要文化財を含む貴重な所蔵文化財を後世に継承していくための収蔵機能の徹底を図るとともに、一部を展示公開できる展示スペースも設けた施設として、今年迎えた750回大遠忌に向けて進められてきたものである。
 
 周囲の樹木をできるだけ伐採しないという考えのもとで新築された建物は、外からは2層のように見えるが、実は地下1階地上4階建ての5層構造になっている。そして5層のうちの4層は同寺の数千点に及ぶ資料を収蔵する収蔵庫のフロアで、文化財を劣化から守るために庫内の空調や内部の壁面などに最新の設備を用いた環境づくりがなされている。また、建物自体も巨大な免震構造によって支えられ、想定しうる揺れの数倍にも耐えうる設計になっているという。ここに、別所で保管されている宝物の数々が順次収納され、守り伝えられていくことになる。
 
 展示室は、以前の聖宝閣では階段を上り下りする形であったために参拝客には不便な面があったが、新しい聖宝閣では五葉関と渡り廊下で結ばれた2階に位置し、総受所から通路を通ってそのまま入ることができる。エレベータも設置されているので、高齢者や身障者にとっても利用しやすいものになっているといえる。
 
 室内は大きく常設展示室と企画展示室に分かれ、前者では、道元禅師が中国(宋)に渡ったときに使ったとされる笈(荷物を運ぶためのもの)や、帰国して最初に著した自筆の「普勧坐禅儀」(坐禅の尊さや方法を細かく記したもので、国宝・複製)、江戸時代まで500年にわたって使われてきた梵鐘(重要文化財)などを展示、後者では現在、北宋時代の十六羅漢図をはじめとした仏画約20点が展示されている。
 
 10月20日まで行なわれる大遠忌には全国からおよそ15万人が訪れるといわれるが、節目ともいえる年に、永平寺の歴史を物語る資料を安全に保管しつつ、参拝者が歴史の一端を間近に見ることのできる施設が完成したことは、同寺の歴史に新たな1ページを刻むことになろう。
 
 
(左)●750回大遠忌を記念して新築された瑠璃聖宝閣。躯体は鉄筋コンクリートだが、一部に檜材を用いている
(中)●正門を入って左側が聖宝閣正面になる。木々の緑に調和して建物が映える。雪の季節にはまた違った趣が感じられる
(右)●宮崎奕保禅師の筆になる額が掲げられている
 
(左)・(中)●入口を入ったところが常設展示室で、正面に道元禅師が渡宋の際に使っていた笈と、その足跡を示すパネルを展示。その奥に仏像や書画を展示している
(右)●常設展示室の隣の企画展示室では、現在、同寺所蔵の仏画を公開。今後、年に何回かの展示替えが行なわれていくことになろう
 
(左)●エレベータホールには永平寺の歴史を記した年表をパネルで掲示。写真右手がエレベータ乗り口
(中)●展示室への入口。総受所から渡り廊下の通路を通って行けるようになった
(右)●地下の収蔵庫。天井のチューブ状のものは空調の給気設備。室内全域に均質な気流が生じるように工夫された。ほとんど空気の動きが感じられないほどおだやかで、文化財にダメージを与えないだけでなく、有害生物防除管理にも役立つ。壁面材は珪藻頁岩セラミックス。不燃性だけでなく、他にない優れた調湿機能を持っている。
 
(左)●軒が短く反り返ったフォルムが印象的。写真手前の五葉関とは渡り廊下でつながっている
(右)●鎌倉時代の五祖義雲禅師の代に鋳造された梵鐘は重要文化財に指定されている
 
 

 

データ 2002年6月現在

[所在地] 福井県吉田郡永平寺町志比5-15
大本山永平寺内
[オープン] 2002年3月12日
[建築面積] 613.27m2
[延床面積] 1,916.49m2
[構造・規模] RC造の上部構造と基礎との間に免震装置を入れた免震構造、地下1階地上4階建
[施設内容] 展示室、企画展示室、 収蔵庫など
[開館時間] 8:00〜17:00

 


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