ケーススタディ 特集


インタビュー

(株)三菱総合研究所 主席研究員/
山形県企業立地アドバイザー

小松氏 小松 史郎

[聞き手]
(株)丹青社 tansei.net編集長
柳原 敏幸

物産品紹介センターから提案型市場開拓センターへ。
店のミッション、コンセプトを再定義することで、
地方自治体のアンテナショップを、より活性化


「何が」だけでなく、
「誰に」「どう」
売れているかの収集が
"アンテナ"の役割

―小松さんは、山形県の企業立地アドバイザーを務められるなど、地方自治体の地元企業支援政策へのサポートについても、いろいろと手がけられていらっしゃいますが、地方自治体が東京などで展開するアンテナショップの現状については、どのようにご覧になっていますか。

北海道どさんこプラザ(有楽町)小松 地方自治体のアンテナショップといってもいろいろな役割があります。多くは観光センターやUターン・Iターン就職サポートセンターとか、地元企業のビジネスサポートなどもやっており、自治体でなければできない機能があります。その中で地方自治体のアンテナショップの機能をあえて取り上げるならば、いろいろと工夫する余地はあると思っています。

 アンテナショップの本来の目的というのは、売れ筋情報に「顧客属性」が付いていて、それがメーカーにビビッドにフィードバックされ、それを基に新商品が開発されることです。しかし実際には、各商品の販売実績はデータとして上がってきますが、その商品を、どういった層の人が買っていき、その商品に対して、どういう意見・感想をもっているかまでは、地方自治体のショップの多くはつかんでいないのが現状です。地元の企業と一緒になって商品開発を行い、新商品のテストマーケティングを実行し、首都圏での商品開発に成功したというような話は多くはありません。

―「顧客属性」が付加された売れ筋情報を収集するためには、どうしたらよいのでしょうか

やまがたプラザ ゆとり都(虎ノ門)小松 ほとんどのレジにはいま、キーが余分に数個付いています。その数個のキーを使って購買客の性別や年齢などを打ち込むことができるようになっています。民間ではすでに行っていることなのですが、売上データの中に、そうした顧客属性が情報として入っているだけで違ってきます。「何が売れているか」だけではなく、「誰に売れているか」「どう売れているか」という情報を収集することが、アンテナショップの"アンテナ"の役割です。もう一つは、すでにやっている県もありますが店内客アンケートです。

 商品を販売している側からは「こんなデータは役に立たない」と思う情報であっても、商品を製造しているメーカーにとったら「宝だ」と思うものであるかもしれません。ですから、アンテナショップで、どういった顧客情報を収集していくかについても、商品を製造しているメーカーと一緒になって考えていく必要があるでしょう。そして、特定の商品を何度も買っていくお客さんには、店員が「これはどこがいいんでしょう」と声をかけて聞き、その情報をメーカーにフィードバックする。そういうことを通じて初めて新商品が生まれてくるのです。

これからの
アンテナショップとは
何なのか考えてみると

―店頭での販売の仕方については、いかがでしょうか。

にほんばし島根館(日本橋室町)小松 商品の陳列にしても、アンテナショップでは、地元の有力企業の定番商品が最もいい場所を占めているなど、戦略的な商品陳列になっていないこともあります。民間のスーパーであれば「今月はこの商品を売ろう」という戦略があって、優先順をつけて商品を棚に並べています。
 スーパーの陳列棚というのは、どういう商品をどう並べたら最も売れるというノウハウがありまして、本社の商品部のスーパーバイザーが、各店を巡回して商品の陳列をチェックし、商品の並びがよくないと「これとこれを入れ替えろ」と指示します。そうすると翌日には、必ず店長から「売上が上がりました」という電話がくるそうです。このごろ、そうした"陳列の妙"をわかっている人を現場に配置し、お客様に商品の薀蓄や能書きを言える商品知識のある店員を配置しているショップも少しずつ増えてきました。

 たとえば、民間のスーパーであれば、月次売上が対前年同月を5%下回ったら、店長は「売上げを上げるためにどうしよう」ということを、それこそ寝ないで考えるわけです。アンテナショップは委託販売がメインですので、売れなかったら返品すればいいのです。したがって大きな赤字は出ないので、売上げの対前年同月比を下回っても責任を問われることはありません。しかし、ここで考え方を変えてみましょう。私は、仕入れリスクを取ってでも売上げを伸ばすことに快感を覚える店長や店員を配置することが重要だと思います。

 アンテナショップで品揃えと仕入れの権限と責任が店長に任されているかというと多くはあいまいです。思い切って店長に権限と責任を移譲してみてはどうでしょう。

地方自治体の
アンテナショップにも
ビジネスマインドのある
積極的経営が必要

―それでは、本来の意味で「アンテナショップ」の役割を果たすためには、どうしたらよいでしょうか。

京都館(溜池山王) 小松 店のミッション、コンセプトを再定義して見直す必要があるでしょう。つまり、「物産品紹介センター」から「提案型市場開拓センター」に転換するということです。

 地方自治体のアンテナショップはこれまで、物産の紹介・宣伝普及・販売・試食にはじまり、売れ筋商品情報の収集・分析までは行ってきました。今後はこの顧客属性の付いた貴重な情報を地元のために積極的に活用することが重要になります。アンテナショップが地元企業の新商品のテストマーケティングの場になって、新たな商品開発に結びついていく望ましい姿だと思います。

―インターネットの時代に、地方自治体のアンテナショップはどうあるべきでしょうか。

銀座わしたショップ(銀座1丁目)小松 インターネットが普及してきますと、このままではバーチャル店舗で商品販売ができる時代になってきます。そんな中でアンテナショップはリアルのショップだからこそできる店作りをしていかねばなりません。そのためにはインターネットで評判になった県の商品の現物が必ず置いてある必要があるかもしれません。また単にモノを売るのではなく、お客様とのフェース・トゥ・フェース会話のなかで、「地元では、こういう食べ方をしているんですよ」とか、「この食材をこういう使い方もしているんですよ」といった説明をし、その場で実際に食べさせる体験をさせることがアンテナショップの役割になるでしょう。

 そんな地元の食生活やライフスタイルというのを紹介・提案することを通じて、首都圏の生活者に「一度ああいうところに行ってみたい」と思わせるリアルな情報を発信していく拠点になっていくことも、アンテナショップの役割になるでしょう。

―もっと提案力をつけなければならないということですね。

ふくしま会館(上野池之端)小松 そうです。提案力ということで言えば、店の客だけでなく首都圏の企業の客への提案形営業も大切です。具体的には、毎日毎日沢山の商品を開発をしているメーカーやスーパー、コンビニの本部に行って、「今、どういったテーマで商品開発をやってるんですか」、「それなら、わが県のこんなものを使っていただけませんか」と提案するやり方です。それは県の東京事務所の仕事でアンテナショップの仕事じゃないと言われるかもしれませんが、県産品を首都圏で紹介し、それを地元企業や生産者に繋げるのがアンテナショップの役割ならば東京事務所と一緒にそこまでやるべきでしょう。東京は日本で一番商品開発している企業が集まっている所です。これをやることが地価の高い東京にアンテナショップが立地していることのもう一つの意味なのではないでしょうか。

―これからのアンテナショップの経営はどうあるべきとお考えですか

小松 いくつかのアンテナショップではすでに行われていることですが、ビジネスマインドをもった能力のある人や企業に権限と責任をもたせて経営にあたらせる経営改革が必要です。そのためには、経営者本人に目標を作らせる「目標管理制度」の導入が必要です。そして目標をクリアしたら何らかの褒美を出す「褒賞制度」もあわせて必要です。その代わり、目標が守れなかったら、場合によっては経営権も返してもらいますという制度にする。信賞必罰をきちんとやれば、地方自治体のアンテナショップはお客様にもっと喜ばれるものに変わっていくと思います。すでにそのような変革にチャレンジしているアンテナショップも出始めています。

―本日は、お忙しい中ありがとうございました。

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