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 JR久慈駅から西に約6km、古くから琥珀採掘が行われていた岩手県久慈市郊外に所在する国内唯一の琥珀専門博物館「久慈琥珀博物館」に2004年6月1日、新館がオープンした。

 国内最大の琥珀産地として知られる久慈地方における琥珀採掘の歴史は古く、古墳時代にはすでに久慈地方産の琥珀が大和朝廷の下に運ばれた"アンバールート"が存在していたことが、古墳出土品の化学分析で解明されている。また久慈地方で産出される琥珀は、いまから約8500万〜9000万年前の中生代白亜紀後期の"恐竜時代"に属するもので、宝飾品等に加工されている琥珀としては世界で最も年代が古い。近年では、久慈地方産の琥珀の中から昆虫や羽毛等の化石が相次いで発見されるなど、国内外の研究者からも注目を集めている。

 久慈琥珀博物館は、同地で琥珀装飾品の製造・加工・販売を展開する久慈琥珀(株)が1984年4月の三陸鉄道開通に合わせ、「久慈琥珀資料館」として同年5月に開設したもので、92年4月に現施設名に名称変更した。既存施設の本館が、学術的にも貴重な資料である琥珀について、自然科学と人文科学の両面から紹介しているのに対し、開館20周年の年に開設された新館は、琥珀製の美術工芸品を展示するのをはじめとして特別企画展の会場としても使用される「琥珀ギャラリー」、琥珀を使ってさまざまな実験を行う参加体験スペース「アンバーラボ」、癒しや安らぎなど琥珀に秘められた不思議なパワーを体験できる「琥珀リウム」など、"琥珀の神秘"に『見て・触れて・体感する』ことができる構成としている。

 また、展示観覧後のオリジナルグッズ等のショッピングも博物館見学の楽しみのひとつである。久慈琥珀博物館ではこれまでも、ペンダントやブローチ等の琥珀アクセサリーをはじめ、懐中時計や万華鏡、琥珀を使った入浴剤やお香など、さまざまな琥珀グッズを販売する「琥珀ショップ」を本館2階に設けていたが、新館1階インフォメーション前にも「ミュージアムショップ」を設け、来館の記念となる博物館オリジナルのミュージアムグッズを販売するなど、来館の"思い出づくり"となる仕掛けにも力を注いでいる。

左●「インフォメーション」では、入場チケット販売と総合案内・受付のほか、久慈市および周辺地域の観光情報を提供。写真奥は古代ギリシャ神話で「太陽の石」と言われている琥珀をデザインしたシンボル展示
中●樹脂の雫をイメージした外観が特徴的な「新館」
右●新館展示室の「エントランス」は透明感溢れるデザイン
 
左●「ミュージアムショップ」では、琥珀をモチーフとした博物館オリジナルの楽しいミュージアムグッズを販売
中●「琥珀ギャラリー」では、世界最大の琥珀製モザイク画2作品をはじめ琥珀製の美術工芸品を展示
右●「本館」は、久慈地方および世界の琥珀について「太古からのメッセージ」と「人と琥珀」のテーマで展示・解説
 
左●アクセサリーをはじめバラエティ豊かな琥珀製品を揃える「琥珀ショップ」
中●本館に隣接して建つ「ワークスタジオ」。石の選別から切断、研削、成型、研磨艶出、彫金、金具付け、検品間ですべての加工工程を覗いて見ることができる
右●琥珀産地同士ということから久慈市は、日本で唯一リトアニア共和国のクライペーダ市と姉妹都市を締結。その関係から久慈琥珀博物館はリトアニアの物産館「GINTARO(ギンタロ)リトアニア館」を設けている(ギンタロはリトアニア語で「琥珀」の意)

左●1918(大正7)年ごろまで実際に琥珀が採掘された「坑道跡」。入口からコースに沿って進んでいくと、採掘現場の雰囲気を体験することができる
右●三陸の海の幸をふんだんに使った本格フレンチが楽しめる「ビストロくんのこ」。久慈地方では、琥珀のことを薫陸香(くんろくこう)と呼び、貴重な薬用として使用。「くんろくこう」がなまって「くんのこ」というようになった

●開発したミュージアムグッズ

●他のミュージアムで開発したミュージアムグッズ

●施設概要
[所在地] 岩手県久慈市 小久慈町19-156-133
[新館オープン] 2004年6月1日
[事業主体] 久慈琥珀(株)
[敷地面積] 1,285m2
[構造・規模] RC造・地上2階建
[延床面積] 410m2
[開館時間] 9:00〜18:00 (4月29日〜10月31日)、
9:00〜17:00 (11月1日〜4月28日)
[休館日] 年末年始(12月29日〜1月1日)、
冬季(2月25日〜2月末)
[入館料] 大人500円(400円)、 小・中学生200円(150円)
※カッコ内は団体料金 (20名以上)

 

インタビュー

向氏 久慈琥珀(株) 取締役社長
向 正彰

[聞き手]
(株)丹青研究所 文化空間研究本部 文化デザイン部アートディレクター
小美野 隆

百の言葉を用いるよりも
完成していく過程を見るほうが、
社員にとっても遥かにためになりました


―丹青研究所では、代理店である(株)電通東日本のプロデュースのもとで、建築設計と展示計画とともに、ミュージアムグッズの商品開発を行わせていただいたのですが、今回、新館を新たに建設しようとお考えになった狙いというのは、どういったことだったのでしょうか。

 正直な話、本館だけだと来館者がジリ貧になっていくばかりだったということです。年間入館者数のこれまでの最高は、久慈市侍浜町に久慈国家石油備蓄基地の地下坑道を利用した久慈地下水族科学館「もぐらんぴあ」がオープンし、その相乗効果が出た1994年度の約4万3,000人です。ところが2003年度には、2万8,000〜2万9,000人にまで落ち込みました。来館者数が減少しているというのは、簡単に言うとお客様の立場になっていないということです。いくら博物館で良いものを展示しています、希少価値がありますと言ったところで、お客様のニーズと合っていなければ意味がありません。3万人を切った段階で決断しないと盛り返すのは難しいと考えていましたので、思い切った投資をすることにしました。そして、どうせ投資するなら、本館にないものを新館で補って、それで相乗効果を出そうと考えたのです。おかげさまでオープン後は順調に来館者が増え、年間来館者6万人、収益も33%増となりました。

―計画の段階で向社長は「新館は本館の増床や別館という位置づけではなく、新館を集客の中心にしていきたい」とおっしゃられました。

 それで非常に良かったのは、本館の後ろ側にレストランがあり、いま新館が建っているところにあった駐車場を挟んで道路の反対側にリトアニア館があるというように、それまで散らばった感じだったのが、新館を中心にまとまりがよくなりました。

―久慈琥珀博物館には、すでに本館に「琥珀ショップ」がありますが、新館を建設するにあたり新館に「ミュージアムショップ」を設けることを提案させていただきました。

 本当はミュージアムショップはやらないほうがいいとも思っていたんです。というのは、分散するのがよくない。団体、観光バスなどでお越しになられたお客様は、博物館に居られる時間も限られていますので、分散してしまうとお客様が琥珀に行き着かないうちにお帰りになってしまうということにもなりかねない。われわれは、まだまだ琥珀で追求していくものがあります。それをミュージアムグッズといって、既存のありきたりのものを置くようになってしまったら、逆に持ち味をなくしてしまうと思います。

―確かに、社長のおっしゃるとおりだと思います。ただ、琥珀は非常に価値の高いものであると同時に、非常に高価なもので、お子様や学生の方など、そういうものに手を出せないお客様もおられると思います。ですから、これだけの素晴らしいコレクションをお持ちの博物館に来た思い出となるような商品を、ミュージアムグッズとして開発していくということは、十分に可能だというように考えています。

 そうですね。ミュージアムグッズというのは、そういう切り口だと思います。そういう方向で集約していくと、ミュージアムグッズにも良い物ができてくるでしょうね。

―今回の新館開発のプロジェクトは、社長の熱意に全員が動かされ、それぞれが自分の役割を一所懸命に果たしたという感じでしたね。

 私より私の周りの人たちのほうが、より情熱があったと思います。新館の建設中、社員は毎朝、その前を通りました。その間に、社員が成長していくのが、目に見えてわかりました。私が百の言葉を用意するよりも、施設が完成していく過程を見ているほうが遥かにためになるんですね。

―私どもも非常に勉強させていただきました。本日はお忙しいところ誠にありがとうございました。

 

 
 
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