ケーススタディ

 
野口先生とツアーにご参加いただいた方々(総勢19名)  2005年2月13日(日)〜19日(土)の7日間、(株)丹青社としては初めての試みとして、 「野口智雄教授と行くミラノ・パリ商業施設研修ツアー」を実施した。 ミラノ・パリといえば、歴史と伝統に溢れた街だが、それ以上に世界のファッションや最先端の商業施設のある街として、 常に注目を集めている。今回のツアーには、デベロッパーやテナント出店者企業など、 さまざまな企業から参集していただいた。 ツアーの特徴は、研修旅行にとどまらず、行程内に2度、野口教授のセミナーがあり、 途中途中で総括しながら進められたことである。 また、本来入れない場所も許可を得て、見させていただくことができた。
 
伊仏雑感  

●野口先生のご講演
◇講演第1回目はミラノでの3日目の2月15日午前、ホテルのセミナーホールで開催されました。イタリアでは98年に新商業規則緩和があったものの小売業売上高上位5社の市場占有率が38.9%とフランスの73.3%、ドイツの66.4%に比べて低いこと、互助、相互扶助の意識が高くCOOPが小売業第1位であることなど、またFIAT社を救済するために車庫証明を廃止し、車の購入を促進した国策が結果的に道路を無法駐車天国にしてしまっていること、そして皮肉にもFIAT社よりもTOYOTA社の小型車が売れてしまっていることなど、興味深い内容のお話をいただきました。
◇第2回目の講演はパリ着3日目の2月18日午前、眼下にエッフェル塔を見下ろすコンコルド・ラ・ファイエットホテルのセミナー室で行われました。唯我独尊的な中華思想に似たところがあるフランスは先に行われたEU統合においても先頭でこれを達成し、誇り高い民族であること。経済面ではパリにある6600店舗の中小零細小売店はこの10年間で25%が閉鎖している状況、とは言うもののけっして上位大型店が安穏としているわけではなく日本撤退をきめたカルフール社は実は日本での売上不振ではなく、自国の業績悪化が原因であることなどの説明をいただきました。日本と似た安定成長期に入っているフランス、中心市街地と施設見学したヴァル・ド・ヨーロッパ(SC)、ラ・ヴァレー(Outlet)などの郊外の新商業施設の顧客獲得競争は、さらに目が離せない状況になっていくと思われました。

●ミラノ紀行……
・町の至る所でスプレーペンキアート(らくがき)がみられ、重厚感ある街の景観を汚している。
・地下鉄はどこまでいっても1ユーロだが汚くて、暗くて危険を感じる。
・表通りを歩くほとんどの男性はイケメンだった。(デルピエロ、トッティーみたいな)さすが美男子の名産地。
・ガラスの大屋根がシンボルのビットリオ・エマヌエール2世ガッレリア通りのお店はすべてファサードは制約がある中世の建築様式ながら、店舗の中のデザインはブランドごとの自由。実に良い調和であった。
・何世紀にもわたる戦いの歴史、伝統の重みと都市の鼓動を感じた。そこで思いだした言葉はミラノなのに「すべての道はローマに通ず」。
・商店は1階または1〜2階店舗が主流。百貨店、SCという業態は発展していなく、中小零細小売店舗が町を支えている。ほとんどのビルがまわりを外向き店舗で覆っており、街づくりには手本となった。(モンテナポレオーネ通り、スピーガ通りなど)
・三ツ星レストランにも好みで当たりはずれがあることがわかった。ただし、伝統的なイタリア料理は基本濃い味で、美味しかった。

(左)●ガリバルディ駅近くの「High Tech」店内
(中)●ミラノ中心地のガレリア内。重厚かつ繊細な建築物と温かい照明が印象的
(右)●ミラノ郊外のセラヴァッレアウトレット。英国の大手アウトレット開発会社、マッカーサーグレン社による

●パリ紀行……
・シャンゼリゼのヴィトン本店、カルティエ本店の仮設は壮観。
・シャンゼリゼも、モンテーニュ大通りもフランス国外の企業に徐々に押されはじめている?。(トヨタ、メルセデス、ヴァージン、GAP、プラダなど)
・地下鉄が1.4ユーロで思ったより綺麗、で安全、1〜2分で次の駅にいけるほどの近距離に駅が便利。
・フレンチカンカン発祥の地「ムーランルージュ」で、かぶりつきでショーが観られて感激。
・ブルガリホテルなどを見学して本当の意味での高級ホテルというのは、今の日本にはまったく存在しないものと実感。金では絶対に買えない歴史、伝統文化の重みをフランスに感じた。
・凱旋門の地下が戦士の墓地になっていると聞き、身が引き締まった。
・ラデファンスの新凱旋門の開発には550人の作品応募があり、無名のデンマーク人が当選したとはおどろき。
・フランスも深刻な車公害が広がっている。ラデファンスは交通網整備が効果を上げ通勤者の車利用率は10%(市街地は50%)になった。共同駐車場を設けていて各ビルには駐車場はないとは、何と効率の良いことか。
・パリの婦人は「ヴィトン」などでは買い物はしなくて、買うのはかなりセレブリティな高齢の方だけだとのこと。日本人の猫も杓子も買いあさる風景は、金満日本を滑稽に表現してしまっている。なにごとも集団意識(仲間はずれを嫌う)が働く当世日本人無節操気質か?

(左)●パリ郊外のラデファンス地区の新凱旋門前広場。160haの広大な土地の地下は、土地勘のあるドライバーでも迷うほど非常に入り組み『地獄の道路』と言われている。土地(人工地盤)は国家公団が所有し、人工地盤の上部は民間(エパード社)が購入し、管理運営している
(中)●エパード社の都市計画建築家によるプレゼンテーション。新凱旋門はシャンゼリゼ通りと凱旋門の延長線上に位置するというのは有名な話だが、実は『5°』だけ曲がって配置されているという
(右)●シャンゼリゼ通り沿いのルイヴィトン本店(リニューアル中)の『仮囲い』

●個店拝見……
「High Tech」(ミラノ)
 北の玄関ガリバルディ駅からコルソコモ(通り)を南に下る。ちょっとした広場になっているガリバルディ門の近くに雑貨店?とはひと括りにはできない面白いお店があった。石造りのアーチの入口を入ると(普通はパティオ中庭を想像するが)中にもう一つの時代が異なる建物があり、緑に覆われていた。中2階のエントランスを登ると、まずイタリアの原色を使ったヴィヴィドなデザインのアートな小物たちが目に飛び込んできた。ズラリと並ぶ筆記用具や小物入れ、ガラス製品、お手軽アクセなど。自国の伝統をしっかりと受け継ぎ、かたくなまでにこだわった様式美に漲る自信を感じた。見渡すと 坪くらいかと感じた店内、実は奥の回廊へと続くところからの広がりが想像を超えた。強引に言葉でまとめると、イタリア版ミニ東急ハンズか伊勢丹BPQCの雑貨版か、いやいや、ここは迷路のようでドンキホーテの高級バージョンか?蟻の巣というかピラミッドの中の王室へ繋がる回廊か、床は自由な素材でステップが多く、天井はデコっぽい曲面が多く使われていて、高さはまちまち。低いところは本当に洞窟のようで、そこに特徴あるアートな食器、一般家庭用品、家電製品、などが売られていたりしている。オリエンタルな家具にファブリックが狭いスペースながらシーンでディスプレイされている。ど派手な花柄のごみ箱のとなりに収納ラック、グラデーションをかけたガラスの花器に、銀製の3次曲線美の皿?石鹸受け?なんだか、良く分からないが、全部持って帰りたいような衝動が走る!全体的な感想。とにかくメリハリがあって、伝統芸術的な誇りを感じて(自己主張があって)真似できない店だなあという発想。ミラノへご旅行の折は一度お立ち寄りをお勧めしたい。

ミラノ・パリ商業施設研修ツアー日程  
 
2月
13
成田発 1)09:35
2)13:55
空路ヨーロッパ内乗り継ぎにてミラノへ
着後、商業施設と市内建造物を中心に市内見学
  ミラノ着 1)17:25
2)18:40
ミラノの歴史ある建造物と最新商業が特徴的な夜の街並みを見学
ホテルのレストランでウエルカムディナー (ミラノ泊)
14 ミラノ 午前 ビコッカ開発プロジェクト視察:94万m2のミラノ市北部再開発プロジェクトを、主に商業エリアを中心に視察
    午後 ギャラリエ、ラ・リナシャンテ、セラヴァッレ アウトレット(マッカーサーグレンアウトレット)など商業施設を中心に市内見学(ミラノ泊)
15 ミラノ 午前 ホテル内バンケットで野口先生セミナー
    午後 世界のファッションの中心であるミラノ商業(モンテ・ナポリオーネ通り、スピーガ通りなど)を研究(各自)(ミラノ泊)
16 ミラノ発 午前 空路パリへ。商業施設と市内建造物を中心に市内見学とパリ郊外
  パリ着 午後 大型ショッピングセンター(ヴァル・ド・ヨーロッパ)と隣接するパリ最大アウトレット(ラ・ヴァレ・アウトレット)訪問(パリ泊)
17 パリ 午前 新凱旋門で有名なラ・デファンス地区都市再開発についてのプレゼンテーションおよび現場視察
    午後 パリ市内商業施設(フォーラム・デル・アル、クール・サンテミリオン、カルセル・デュ・ルーブル)訪問 シャンゼリゼ通り周辺にてフランス最先端の商業視察(各自)(パリ泊)
18 パリ 午前 ホテル内バンケットで野口先生セミナー
    午後 パリの最先端商業(コレット、モノブリ、ボンマルシェ、ギャルリ・ラファイエット、プランタンなど)を見学(各自) 空路ヨーロッパ乗り継ぎにて成田へ(機内泊)
19 成田着 1)19:00
2)14:00
 

ピコッカ開発デベロッパー、ピレッリ社によるプレゼンテーション風景
 

野口先生によるセミナー風景(ミラノとパリで2回開催)
 

「ヴァル・ド・ヨーロッパ」。核がアウトレットとSMのファミリー向けSC
 

「クール・サンテミリオン」。ワイン倉庫跡をSCに改装、歩道に運搬貨物列車の線路がそのまま残る
 

パリ最大級のデパート「ギャルリ・ラファイエット」のホール。女性の高揚感を誘うような贅沢な空間
   
           
 ミラノ・パリ商業施設 研修ツアーを終えて
 野口 智雄  

 今回、丹青社の厚意と企画により、イタリア・ミラノとフランス・パリにおける近年の都市開発と著名な商業施設の視察を実施させていただいた。小生のセミナーは、両都市で主要な施設を見学した後で合計2度行った。こちらからまず両国の経済情勢、小売業の特徴、規制の動向、商業集積のトレンドや魅力についてプレゼンテーションさせていただき、その後でご参加の方々から貴重なご意見を賜った。
 今回は多くの施設を見、多くのことを学んだが特に、ミラノの商業施設に関しては、中心部に鎮座するドォーモ(大聖堂)のそばに1800年代から十字に広がるヴィットリオ・エマヌエーレ2世通りからイタリアの商業の伝統や威容を学んだ。また、パリではラ・デファンス地区の都市開発を視察し、子細にわたる解説を受け、街づくりへのこだわりと建造物の芸術性に深い感銘を受けた。
 ミラノも、パリも歴史のある、個性的な街である。だからといって、黴の生えたような伝統に埋没することなく、違和感を覚えるような「最新」の顔も見せてくれる。これが「感動」の源泉であり、「伝統と先進の街」に深い感動を覚える旅だった。
 

のぐちともお/1956年東京生まれ。82年一橋大学大学院博士課程修了。92年早稲田大学助教授、93年早稲田大学教授、94年から早稲田大学大学院教授。激変する日本の流通構造、企業活動、消費態様などに関して、理論と実証の両面から分析を試み、オリジナルなコンセプトや理論の提示を行っている。
 

 
 ご参加いただいた方々の感想  

ツアーに御同行頂いた皆様よりいただいた感想の一部を御紹介させていただきます。 皆様には、この視察ツアーを無事終えることができ、今回企画させていただいた我々一同、深く感謝しております。 (感想は順不同)
 

『開発のコンペから現在の事業的な流れが興味深かった。コンペの勝者の意見を最後まで尊重する開発の姿勢が、日本との大きな差だと思った。』(ミラノ・ビコッカ開発を視察して/(株)日建設計 加古藤郁様)

『(視察先は)多分、自分では行かない場所でした。でも、開発の経緯等を聞いてみて、思っていたのとは違ったことも多く、解説を聞けたのはとても良かったです。』
(パリ・ラデファンス地区を視察して/(有)フラットリー代表取締役 平内幾与様)

『日本のように効率だけを考えた開発・商業施設ではなく、デザイン・色の使い方には感心させられました。また、運営に関してはカルフールのように効率を追求して上位集中している中でも、個人商店が個々の個性を活かしながら共存している姿に歴史の重みを感じました。』(パリ感想/(株)ららぽーと アルカキット錦糸町オペレーションセンター所長 松崎毅様)

『15年ぶりだったので、微妙に店が変わっており、変化が実感できた。ブランド系はあまり変わらないが、ZARA,H&M等の世界チェーンが一等地にメガストアを構えており、二極化を目の当たりにしました。』(ツアー感想/三井不動産(株) 商業施設営業部営業グループリーシングコーディネイター 須賀勲様)

『パリは街の景観がきっちりと守られていて、街歩きをしていて非常に気持ちの良い街という印象。視察時には、普通に行っても見ることのできない場所(バックヤード等)を見ることができればもっと良かったのではないでしょうか。』(ツアー感想/(株)阪急ファシリティーズ 常務取締役 PM推進本部長 古川一洋様)

『ラ・デファンス視察では、EPAD(デファンス地区開発公社)のレクチャーを受けることができましたので漠然と外観を見るだけではなく、デファンスの開発思想をより深く理解できました。期待以上に良いコースでした(こういうのはツアーならでは)。ツアー全般を通して、私なりに街並と店舗ファサードの関係について新たな発見ができたと思っております。当初はツアーの主旨がよく理解できず、何をどう見ればいいのか非常に不安でしたが、結果的には商業というおおらかなくくりでツアーが組まれていて、テーマが絞られ過ぎていなかったところで、逆に私なりの発見ができたと感じています。おそらく他の皆様もそうではないでしょうか。またこのような機会を是非設けてください。きっといい発見の機会になると思います。』(ツアー感想/(株)三菱地所設計 丸の内設計部主事 竹内泰様)

『今回ヨーロッパは始めてだったのですが、今までは旅行と言えばアメリカだけで興味もあまりヨーロッパにはありませんでした。しかし今回の視察でフランス・イタリアに非常に興味を持てました。商業的にはなかなか結び付けることは難しいとは思いますが、ある意味現在の日本の商業施設と差別化するという意味でも可能性を感じます。』(ツアー感想/(株)ケーティーインセンスモール SC企画部課長 金子栄一郎様)

 

[ツアー同行]
(株)丹青社
営業開発室 SCC1部長 長谷川 吉男
同 プランナー 服部 玲巳
商空間事業本部 第4営業部長 朝田 賢治


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