ケーススタディ
玉川高島屋 ショッピングセンター新南館

「上質な日常」をコンセプトに
ハイグレードなライフスタイルを提案

データ

 わが国の郊外型SCの先駆けとして、34年にわたり二子玉川の地に地歩を築いてきた玉川高島屋ショッピングセンターが、2003年9月8日、南館を増改築し、「新南館」としてオープンした。
 
 事業主体である東神開発(株)は、1969年の同SC開業以降、“ニューアーバンアダルトガーデンシティ”をコンセプトに掲げ、成城、田園調布、等々力等商圏を半径5km圏内と設定して、いわゆるアッパークラスをメインターゲットとしたMDによる開発を進めてきている。
 
「テナントが衣料品、ファッション雑貨に偏っていた現状を踏まえ、今回の増築オープンにあたっては、普段から足を運んでもらえるよう“上質の日常の提供”をテーマに、飲食店・食料品や家具、生活雑貨などを充実させました」(東神開発(株)企画開発本部 中坪千草氏) 中坪千草氏
東神開発(株)企画開発本部 中坪千草氏
というように、既存館を含めた新南館の総店舗数178店舗のうち、増築部分には62店舗と、既存館の26店舗を合わせると計88店舗が新規オープンとなっており、その構成は飲食22店舗、物販52店舗、食料品13店舗、サービス1店舗と、食の分野が強化されている。
 
 その路線を明確に示した地下1階の食料品フロアは、「上質なデイリーマーケット」をテーマに、鮮魚・寿司・惣菜店、総合青果店などが出店。日常性の高い食料品を充実させることで、来店頻度を高めることを狙いとしている。また1〜6階の物販フロアをみても、「上質の日常」というテーマのもとに、ホームウェアをはじめとした生活雑貨が中心で、とりわけ6階は、商業施設初出店を含むインテリアの人気店3店舗を集めるなど、インテリアショップ集積フロアとなっている。
「ただ高級品ばかりを集めたわけではありません。たとえるなら“毛皮でなく上質のコットンを”という感覚です。時代に流されるのではなく、しっかりとした考えを貫いた商品を揃え、そのうえでこの地域のお客さまを理解してMDを立てられるテナントさんに入っていただいています」(中坪氏)。
 
 食の充実という路線のなかで、もうひとつ注目すべきなのが、7〜11階の5フロアで展開されるレストランゾーン「アトリウムダイニング」で、最上階にはフランス料理店「ひらまつ」が経営するイタリアン「ASO代官山チェレステ」と、京都の老舗割烹「たん熊北店」の大型店2店が入り、グレード感の高い「スーパーダイニング」のフロアとなっている。その他のフロアについても、「ハイクオリティダイニング」「スペシャルダイニング」といったフロアテーマのもと、日本初出店、商業施設初出店、新業態での出店といった独自の店舗構成となっているのが目を引く。同時に、家族、友人とゆったりと食事のできる、「上質な日常を」を感じることのできる環境づくりがなされていることも大きな特色で、営業時間も午後11時までと延長。「玉川ならではの」スタイルで利用できる食の空間づくりが目指されている。
 
 合わせてサービスの充実も図り、駐車の手間と待ち時間を解消するヴァレーパーキングや、自動車で来店したレストラン利用のお客さまもアルコールを楽しんでもらえるよう、自動車の駐泊、代理運転といったドライバーズサービスを開始している。
 また、街づくり型SCを目指してきた同施設にとって、周囲の自然環境との調和には当初から配慮されてきたが、新南館の開設にあたっても、「時感・外感〜時を感じる、外を感じる」をメインコンセプトに、外部空間と内部空間がうまく融合する建築となっており、街・自然との共生という普遍のテーマが貫かれている。
 
 共用部の内装デザインも、「上質な日常」から導き出された「玉川邸宅」というコンセプトで、住宅のインテリア感覚が随所にうかがえるとともに、アトリウムダイニングが取り巻く6〜11階に及ぶ吹抜けは、スパイラル式のエスカレータを配した、構造的にも斬新なもので、高級ホテルを思わせる洗練された雰囲気に満ちている。
「お客さまは、エスカレータがスパイラルになっていることで、移動しながら各階の様子を見ることができます。ガラス張りの店舗では、飲食されている姿も見えますし、乗るたびに違った光景が目に映る“乗って楽しい”エスカレータとなっています。このエスカレータは、“商業施設は空間が楽しくなければいけない”という建築家の提案からつくられたものなのですが、11階まで足を運んでいただきやすいので回遊性が高まり、レストランにとってプラス効果となっています」(中坪氏)。
 
 店舗設計にも、これまでのSCとは違った発想が取り入れられている。
「従来の商業施設では、共用部とテナントのデザインは明確に分かれていましたが、新南館では、あえてその区分をファジーにすることで、商業空間としてのまとまりをもたせました。そこで各テナントさんには、新南館のイメージ、コンセプトを理解していただいたうえで、空間、デザインなどさまざまな条件を提示し、そのなかで店舗デザインを工夫していただきました。なかには店舗区画とパブリックスペースが一体化している場所もありますが、店舗と共用部のデザインが融合したことで、来館者にゆとりある環境を提供できているのではないでしょうか」(東神開発(株)玉川高島屋S・C 南館増築本部 倉本真祐氏)。 倉本真祐
東神開発(株)
玉川高島屋S・C南館増築本部
倉本真祐氏
 
 一方、外に目を向けてみると、“ガーデンシティ”を標榜する同SCにとって緑化は開館以来の重要な施策のひとつであったが、今回は既存南館と本館部分の屋上にブリッジを新設して2館を繋げ、約4,100m2を庭園化し、国内最大級の屋上庭園を実現した。
「メンテナンスなどランニングコストはけっして小さくありません。しかし、緑と川のある街・玉川という地域との調和は私どもの企業姿勢でもありますし、これによって、地域の方々に親しまれる存在を目指すという面からも大切な意味をもっていると思います。平日でもお子さま連れの方などで賑わっていますので、一種の集客装置としての機能も果たしているといえます」(倉本氏)。
 
 新南館のオープンにより、SC全体では合計344店舗の専門店を有する大型施設となった玉川高島屋S・Cは、増築部で約100億円、SC全体で約1000億円の年間売上、および全体で1500万人の年間来店客数を目標に新たなスタートを切った。
 
 
関連サイト:
玉川高島屋ショッピングセンター
 


データ 2003年12月現在

[所在地] 東京都世田谷区玉川3-17-1(玉川高島屋S.C南側隣地)
[オープン] 2003年9月8日
[事業主体] 東神開発(株)
 
●玉川高島屋S・C新南館 増築部分概要
[敷地面積] 45,000m2
[延床面積] 28,300m2(既存部含む新南館計51,300m2
[構造・規模] S造・一部SRC造
地下2階地上11階塔屋2階建
[施設内容] 飲食22店舗、物販52店舗、食料品13店舗、サービス1店舗
[総事業費] 130億円(用地取得関連含む)
[初年度集客目標] 約1,500万人(S.C全体)
[初年度売上目標] 約100億円(増築部)

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