■ケーススタディ
子どもたちの夢を乗せて走りつづける
交通ミュージアム
子どもたち、とくに男の子だったら、
誰もが一度は行ったことのあるのが、交通ミュージアム。
通常の博物館を語るようには語れない、不思議な魅力が交通ミュージアムにはある。
交通博物館とは何なのか、その意義を改めて問い直すことも大切だが、
子どものときに感じたワクワクするような高揚感を思い出してほしい。
今回、訪れた夏休みの交通ミュージアムは、どこも開館前から入館待ちの列ができ、
館内には子どもたちの歓声がこだましていた。
ゲーム、テーマパーク、海外旅行…子どもたちにとってたくさんの
遊びの選択肢がある現代においても、変わらず子どもたちの夢でありつづけている。
その夢を次代へと継承しようと、新たにオープンし、
あるいはリニューアルによって生まれ変わっている交通博物館を特集した。
最近新設・リニューアルした鉄道(交通)博物館
| 館 名 |
開設(リニューアル) 年月 |
所在地 |
| 九州鉄道記念館 |
2003年8月 |
福岡県北九州市 |
| 北陸線電化記念館(長浜鉄道スクエア)
|
2003年7月 |
滋賀県長浜市 |
| 地下鉄博物館(リニューアル) |
2003年6月 |
東京都江戸川区 |
| 旧新橋停車場 |
2003年4月 |
東京都港区 |
| 電車とバスの博物館(リニューアル移転) |
2003年3月 |
神奈川県川崎市 |
横浜市電保存館(トラムポート) (リニューアル) |
2003年1月 |
横浜市磯子区 |
| 交通科学博物館(リニューアル) |
2001年7月 |
大阪市港区 |
| 長浜鉄道文化館(長浜鉄道スクエア) |
2000年10月 |
滋賀県長浜市 |
| 名古屋市市電・地下鉄保存館 |
2000年6月 |
愛知県日進市 |
| (旧)軽井沢駅舎記念館 |
2000年4月 |
長野県軽井沢町 |
| 碓氷峠鉄道文化むら |
1999年4月 |
群馬県松井田町 |
| 福知山鉄道館ポッポランド |
1998年9月 |
京都府福知山市 |
| 新津市鉄道資料館 |
1998年4月 |
新潟県新津市 |
| 梅小路蒸気機関車館(リニューアル) |
1997年7月 |
京都市下京区 |
| 小樽交通記念館 |
1996年4月 |
北海道小樽市 |
その他の主な鉄道(交通)博物館
| 館 名 |
開設年月 |
所在地 |
| 広島市交通科学館 |
1995年3月 |
広島市安佐南区 |
| 名鉄資料館 |
1994年6月 |
岐阜県可児市 |
| 辻堂海浜公園交通展示館 |
1991年5月 |
神奈川県藤沢市 |
| 東武博物館 |
1989年5月 |
東京都墨田区 |
| 北海道鉄道技術館 |
1987年4月 |
札幌市東区 |
| 北九州市立交通科学館 |
1985年7月 |
福岡県北九州市 |
| 旧長浜駅舎鉄道資料館(長浜鉄道スクエア) |
1983年4月 |
滋賀県長浜市 |
| 半田市鉄道資料館 |
1972年4月 |
愛知県半田市 |
| 青梅鉄道公園 |
1962年10月 |
東京都青梅市 |
| 交通博物館 |
1921年10月 |
東京都千代田区 |
インタビュー
松澤 正二氏/(元交通博物館副館長)
バランスのとれた展示と調査・研究
体系的な保存・収集のシステムづくりが必要
| ―交通博物館の定義とその役割についてお考えをお聞かせください。 |
松澤 日本では、交通(Traffic)という言葉を多くの場合に狭義に解釈して使っていますが、私は、トランスポーテイションとコミュニケーションとが一緒になったものが真の交通博物館というふうに考えています。現在の交通博物館は、英語ではTransportation museumとしていますから、運搬・運輸に関する博物館となりますので、乗り物に関する展示だけではなく、乗り物がどのように社会生活に貢献しているかということも解説をしてあげないといけないのではないかと思います。
そのために、動く展示、触れることのできる展示、つまり体験型の動態展示とデータの図表などを通じて、子どもにも楽しんでいただきながら勉強してもらえるということが大事だと思います。
博物館の目的には、展示・公開と同時に、資料の収集・保管、そして調査・研究があります。資料の収集・保管と展示・公開というのは、相反する面がありますので、そのバランスの取り方も大事ですね。
松澤 収集・保管と展示・公開に関してはそれなりにできているのですが、調査・研究はなかなか難しいというのが現状です。多くの博物館に有能な学芸員がいて、それなりの調査テーマももっているわけです。しかし、一部の恵まれた博物館を除けば、時間と費用の面で余裕がないケースが多いのが悩みです。これらの業務を遂行するための運営基盤を安定させるには、博物館は収益事業ではありませんが、入場者数を増やすことや付帯事業を活発にしたり、いろいろな企画や工夫をする仕事も必要になります。
また調査・研究にしても、学究的なものだけをやっていればいいというわけにはいきません。そういう現場の状況も知らずに、博物館は調査・研究活動を怠っているとか、お子様ランチのような展示が多い、というような批判的論調もあるのは残念です。交通関係の博物館がもっている、親しみやすい仕組みを最大限に活かしながら、そのバックグラウンドに調査・研究があるという形にできればいいと思います。
| ―欧米と日本の交通関係の博物館とでは、保存や展示についての考え方はかなり違いますか。 |
松澤 鉄道などの産業遺産を保存するということでは同じになってきていますが、欧米では古い駅の構内や施設を積極的に活用していて、古いものを大切にするという考え方は日本よりも進んでいますね。
| ―日本でも産業遺産をもう一度見直そうという動きが出てきています。そういう意味では、これから交通関係の博物館の役割も社会的に注目されるようになるのではないかと思いますが。 |
松澤 そうですね。交通関係の博物館は、一部のマニアのための博物館ではありません。広く大人や子どもたちに親しんでもらったうえに、モノを大事にする思想を身につける手助けもできれば、非常にいいことではないかと思います。
また、自分の博物館が保管している資料だけでなく、どこにどんな資料があるのかという情報をもっていることも大事で、それらをきちんと整理把握しておくことも立派な資料なのです。
そして、総合的な内容の中央の博物館と、地域社会に根ざした個性的な博物館とが、それぞれ役割を分担して資料を集めたり、連絡をとりながら展示公開をするということを進めていく必要もあると思います。そうしたネットワークでモノを収集しないと体系的なものになっていかないと思います。
アメリカの航空宇宙博物館などは国内で使われている機材が用途廃止になると、自動的に連絡がくるようになっているようです。日本でもそれぞれの機関と博物館がネットワーク化され、機材や資料がそれぞれにふさわしいところに保存されるようなルールができればいいと思います。
■PROFILE
1977〜88年「交通博物館」副館長を務める。(財)日本交通公社文化事業部を経て、57年、交通博物館学芸員となり、「交通科学館」(現交通科学博物館)学芸員、「地下鉄博物館」学芸員などを歴任。著書に「乗り物の博物館」など。81年に、ブラジル政府からサントス・ドゥモン功労賞を贈られている。
*サントス・ドゥモンは、ブラジルの航空の父と呼ばれる発明家。サントス・ドゥモン功労賞は、同国の交通に関して功労のあった人に与えられる賞。
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