ケーススタディ

「街づくり」への理解と共感から生まれたパートナーシップと
"オンリーワンへのこだわりで"
上質で活力に満ちた新しい商業施設の姿を具現化

 
六本木ヒルズ商業ゾーン  

 
 2003年4月25日にグランドオープンを迎えた「六本木ヒルズ」は、「職・住・遊・学・憩」の多様な機能がバランスよく融合された“街”としての利便性と、そこに住み、働き、集う人たちに、より自由な時間の使い方、いままでにない都市の楽しみを提供する“新しい街づくり”を追求した一大プロジェクトである。
 
 街を構成する重要な要素である商業施設においても、六本木ヒルズ全体の計画に沿ったプランが策定された。街としての機能や回遊性に基づくゾーニングごとのMDに基づき、各ゾーンに集う人々の行動シーンを想定し、利用者の視点に立った店舗配置がなされた。
 
 全体は大きく4つのゾーンで構成され、地下鉄六本木駅と直結し、街全体へのアプローチエリアとなる「メトロハット」/「ハリウッドプラザ」では、大人を対象としたカジュアルスタイルの提案、森タワー低層部と4層吹抜けのガレリア空間で構成される「ウェストウォーク」では、世界の最新トレンドや“六本木発”となるファッションやライフスタイルの提案が、また毛利庭園まで続くセミオープンストリートの「ヒルサイド」では、オリエンタルテイストという切り軸からの新しいライフスタイルの提案、そしてヨーロッパの街並みを彷彿とさせる約400mに及ぶ「六本木けやき坂通り」では、ハイクオリティ・ハイトレンドを基調に、これまでの東京にはなかった、新しい発見のあるショッピングの提案が、それぞれ目指されている。
 
 
(左)●六本木けやき坂通りから望む、グランドハイアット東京。個性溢れる9のレストラン・バーのほか、都内有数のスパ施設を備え、都市機能の一端を担う
(中)●スターバックスコーヒーと隣接するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)の新業態店舗「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」。店内のソファで本を読みながらコーヒーが飲める新しい形のコンセプトショップとなり、これまでのTSUTAYAを超えたサービスの提供を目指す 
(右)●ウェストウォーク3階にはジュエリーショップや雑貨などオリジナリティの高い女性のための店が集まる

 
(左)●ウェストウォークの開放感溢れる4層吹抜けのガレリア空間は渓谷をイメージ。世界に向けて発信される“六本木発”のファッションや生活スタイルを提案する店が集まる 
(中)●ウェストウォーク4階には、ハイデザインハンカチーフスペシャリティストア「クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ」やウェザーアイテム専門店「ハンウェイ」など個性豊かな新業態店舗が並ぶ 
(右)●吊階段を利用した照明が印象的なけやき坂コンプレックス内部。地下1階には、伝統に裏付けされた高い品質とモダニズムを融合させた「BALLY」のニューコンセプトショップ第1号店も入る

 
 また、これまでのように時間に制約されない都市生活の楽しみ方やライフスタイルを実現できるよう、「安全」「安心」を大前提としながら、個々の店舗における営業時間も含め、“24時間稼動する街”という理想に向けた追求もなされている。
 
 商業は、街を“生きた”存在とするための血脈ともいえる重要な役割を担っている。したがって、いままでにない都市づくりの可能性を目指した六本木ヒルズにおいては、商業施設もまた新しい発想と可能性に満ちたものでなければならない。
 
 そうした考え方から、森ビル(株)が取り組んだのは「はじめてのこと」「ここにしかない」ものを提供できる商業施設の集積であった。個々の店舗が従来の店舗開発の延長線上で出店するのでは意味がない。そのためにはブランドショップを集めるためのテナントリーシングではなく、お互いがそれぞれの理想を語り合うなかで新しいものを生み出していくパートナーとしての関係をまず構築することが必要だった。 松永 淳氏
松永 淳氏
森ビル(株)では6年という歳月をかけ、約2000社との話し合いを重ねてきたが、最終的に出店者となった200社にとっては、「(オンリーワンの商品策は)店側にとってはリスクが伴う話でもあり、長い時間をかけて企業のトップやキーパーソンとなる方々と何度も対話を重ねました」(森ビル(株) 六本木ヒルズ運営本部 商業MD室 担当部長・松永 淳氏)というように、単なるテナントではなく、同社の街づくりに共感し、理想を共有するパートナーになっている。
 
 テナント側にとっては、「モノ余り時代といわれ、全国規模で店舗の同質化が進んでいる現状に危機意識をもち、自社が生き残るためには新しいことにチャレンジする必要があるとの認識」(松永氏)があった。すなわち、「オンリーワン」というテーマに自社の新しい可能性を見出そうする企業と、新しい都市づくりの可能性を目指したデベロッパー側との共存共栄のチャレンジスピリットが生み出した商業集積だといってよいだろう。
 
 たとえば、ブルーミング中西(株)の世界初のハイデザイン ハンカチーフ スぺシャリティストア「クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ」、ムーンバット(株)の傘をはじめとするウェザーアイテム専門店「ハンウェイ」というように、多くの企業が新業態による店舗を六本木ヒルズに合わせて誕生させている。
 
穐山 壮志氏
穐山 壮志氏
「これまで事業者は、当然のように効率を追求する店舗づくり行なってきました。しかし、ものづくりのプロである彼らの技術やノウハウを最大限に活かすという視点から取り組めば、いままでとは違った商品開発、店舗づくりができるはずなのです。都市の新しい姿を提唱する六本木ヒルズだからこそ、これまでになかったものをつくってほしかった。そのために、商品のデザインから素材、店舗の内装に至るまで、私どもとテナントさんとで、ゼロから新しいブランドをつくり上げていくつもりで話し合いながら取り組んできたのです」(森ビル(株) 六本木ヒルズ運営本部 商業MD室 上席主事・穐山壮志氏=雑貨担当)。
 
 それは、決して新規性ばかりに集約されるわけではない。飲食施設では、むしろ「『安全かつ本物の食材をおいしく調理して提供する』という大原則に立ち返ること」と同時に、「お客さまに料理を提供する店の“顔”が見える店舗づくりであることを重視しました」(森ビル(株) 六本木ヒルズ運営本部 商業MD室 副参事・佐藤整貴氏=飲食担当)という。 佐藤 整貴氏
佐藤 整貴氏
 それは、言い換えれば、経営者のポリシーやシェフの料理に対する思いが、しっかりとお客さまに伝わる店でなければならないということであり、すなわち店のスタイルはもとより、メニューひとつへのこだわり、あるべきサービスの姿等々、すべてが店の個性となって現われるわけである。
 
 ジョエル・ロブション氏の新スタイルフレンチ「L'ATELIER de Joel Robuchon」、小野二郎氏の子息、隆士氏による江戸前鮨「鮨 すきやばし 次郎」、早乙女哲哉氏の「てんぷら みかわ けやき坂通り店」などは、その好例といえる。
 
 
(左)●代官山や愛宕で高感度な客層から支持される『XEX』の日本料理店『An』では、新感覚の寿司カウンターやバーコーナーを併設する
(右)●六本木けやき坂通りブリッジレベルには、「鮨 すきやばし 次郎」や「てんぷら みかわ けやき坂通り店」など老舗和食店や、日本初出店となる清朝宮廷家常菜「レイ家菜(レイカサイ)」など歴史ある食文化を堪能できる店が集まる

 
 また、サービスを専門特化させることで六本木ヒルズならではの店づくりを目指している店舗もある。
 たとえば、9月5日にオープンした「ルイ・ヴィトン」では世界ではじめて深夜営業(木〜土曜日は夜11時まで営業)に踏み切り、続いてオープンする「ヴェルサーチ」は世界初のレディス専門店としての出店が決まっている。また、高い品質とモダニズムを融合させた新しいライフスタイルを提案するニューコンセプトショップ第1号店の「BALLY」のように、「ここにしかない」商品やサービスを提供する店舗も少なくない。
 
(左)●けやき坂通りストリートレベル沿いにある虎屋の新業態店舗となる「TORAYA CAFE」。9月23日には隣接して「VERSACE」が初のレディス専門店舗をオープンする(写真左) 
(右)●9月5日にオープンした「LOUIS VUITTON」前には、開店前から長い行列ができ、多くの報道陣が集まった

 
今市 充彦氏
今市 充彦氏
「すでに明確なプロトタイプとなる店舗を確立し、世界レベルで展開している企業が多いアパレル分野は、いかに特化した店づくりをしていただくかが最大の課題でしたし、それを実現することで、アパレル業界に新風を吹き込むことができたのではないかと思っています」(森ビル(株) 六本木ヒルズ運営本部 商業MD室 副参事・今市充彦氏=アパレル担当)。
 
 17年という歳月をかけ、ゆるぎないコンセプトを礎に誕生した六本木ヒルズ。だが、街としてはスタートしたばかりだ。「テナントの方々とはこれからも二人三脚。実際にお客さまの反応を見ながら、常に意見交換をしていますし、すでにクリスマスや来年に向けて新商品の開発などに取り組んでいます」(松永氏)。
「ショッピングセンターをつくったつもりはない。新しい街だから、常に変化し続け成長するという考え方があったっていいんじゃないか」という、森ビルの街づくりは、第一歩を踏み出したところである。
 
 
(左)●「フランフラン」を展開する(株)バルスにとって新業態となるセレクトショップ「AGITO」は、上質な生活空間のための家具や雑貨が揃う新業態店舗となる(ウェストウォーク3階) 
(中)●スキンケアの発想から生まれた世界初のタオル&ウェア専門店「タッチ」(写真右奥)では、ギフトにも喜ばれるバスアイテムを豊富に揃える(ウェストウォーク4階) 
(右)●ウェストウォーク5階には、さまざまなライフシーンに適応するレストランが集まる。(写真左:炭火焼き肉トラジ インターナショナル、写真奥:名代とんかつ京都三条 かつくら)
 
(左)●「ザ キッチン サルヴァトーレ」では名物シェフ、サルヴァトーレ・クオモ氏がガス釜で焼き上げる絶品のピザを新たに開発した(ウェストウォーク5階) 
(中)●ウェストウォーク6階には、郵便局や銀行などオフィスワーカーや居住者をサポートする施設が集まる 
(右)●ガラス屋根に覆われた吹抜け空間が、六本木ヒルズ森タワーとグランドハイアット東京の一体感を演出。ウェストウォークの各フロアとホテルはブリッジで結ばれている
 
(左)●アリーナを囲むけやき坂コンプレックス地下2階には、インテリア・雑貨ブランドが提案するカフェやショップが並ぶ 
(中)●オリエンタルテイスト溢れる個性的なショップが並ぶヒルサイド地下1階 
(右)●バラエティに富んだ中国料理の店が集まるヒルサイド1階(写真奥:上海小龍包&点心専門店「南翔饅頭店ナンショウマントウテン」、右手前:新中国料理店「トゥーランドット遊仙境」)

 
関連サイト:
六本木ヒルズ (http://www.roppongihills.com/)  
 
 

データ 2003年9月現在

[所在地] 東京都港区六本木六丁目
[オープン] 2003年4月25日
[事業主体] 六本木六丁目地区市街地再開発組合、森ビル(株)
[施工区域面積] 約11.6ha
[建築敷地面積] 約8万9,400m2
[延床面積] 約75万9,100m2
[ショップ&レストラン] ●メトロハット/ハリウッドプラザ(B2〜3F):物販20、飲食21
●ウェストウォーク(2〜6F):物販52、飲食16、オフィスサポートエリア
●ヒルサイド(B2〜2F):物販25、飲食13
●けやき坂通り(ストリートレベル〜テラスレベル):物販21、飲食18


このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。
Copyright 2003 TANSEISHA.co.,ltd.
All right reserved.