| ■ケーススタディ 駅南口に誕生した新しいランドマーク 札幌の活性化に向けた波及効果が期待される JRタワー 大丸札幌店/札幌ステラプレイス 1988年の札幌駅高架化に伴う駅前再開発計画がスタートして15年。今年3月6日、道都・札幌の新しい顔となる「JRタワー」が駅南口にオープンした。 JRタワーは、地上38階・高さ173mの高層タワー(JRタワーイースト)、北海道初出店となる「大丸札幌店」(JRタワーウエスト)、そして、2つのコンコースをもつ、日本でも最大級といわれる商業モール「札幌ステラプレイス」から構成される大規模な駅型複合商業施設。タワーイーストは、客室数350室に宴会場、料飲施設、スカイリゾートスパなどを備えた都市型ホテル「JRタワーホテル日航札幌」(5月31日オープン)、オフィスプラザ、クリニックなどが入居し、38階には札幌の街並みを一望できる展望室を設け、札幌の新しいシンボルとして聳えている。 また、ステラプレイスは、地元ショップ14店舗と札幌初出店となる82店舗を含む161の飲食・物販店舗を集積する一方、7、8階には12スクリーン・2,705席の規模でシネマコンプレックスを展開するなど、エンターテインメント機能も盛り込まれている。 そして、大通地区と駅前地区ですでに5店の百貨店が営業するなかに出店した大丸は、「楽しさ探究百貨店」をコンセプトに掲げ、品揃えの充実とオンリーワン商品の開発に力を入れると同時に、神戸店をモデルに、ゆっくりとショッピングを楽しんでもらえるフロア環境づくりといった特色を打ち出し、新風を吹き起こそうとしている。 さまざまな機能が集約され、ひとつの“街”といえるほどの充実を誇るJRタワーだが、もうひとつの大きな特徴は、施設全体で、ゆとりと快適性に満ちた環境づくりが貫かれていることである。すべての通路が段差を解消したバリアフリー設計になっていることや、車椅子の人でも使いやすいトイレなど、誰もが快適に利用できることを基本に、天井にまでこだわった造作と素材の質感を活かした温かみのあるデザイン、各所に置かれたアートやオブジェが人々の目を楽しませるとともに、南側に面したコンコースには大きな吹抜け空間を設け、大胆に陽光を取り入れた開放的で明るい空間づくりが目指されており、大丸では6階から8階に至る3層吹抜けの空間に「グリーンパティオ」を設けるなど“光”と“緑”が意識されている。このように施設全体が一体となって快適性の創出に努めていることで、機能性だけにとどまらない“くつろぎ”“楽しみ”“集い”を享受できる施設となっているのである。 開業後4日間で早くも100万人を突破。大丸札幌店、ステラプレイスともに予想を超える賑わいをみせ、さらにホテル、オフィス、鉄道輸送という面での効果も重なる同施設には、札幌の街の活性化を通じて、沈滞化している北海道経済への起爆剤として波及効果が期待されている。
JRタワー・札幌ステラプレイス 札幌の玄関口にふさわしい"顔"づくりにこだわり 魅力ある駅前景観を創出 「SAPPORO FRONTIA」をコンセプトにして開発されたJRタワーは、前頁でも紹介したように、商業、ホテル、オフィス、シネマコンプレックスが複合した大型施設であり、ともすると、札幌商業への影響にばかり話題が集まりがちだが、同時に駅としてのアイデンティティも強く打ち出されたものである。 北海道旅客鉄道(株)常務取締役・臼井幸彦氏は計画に際して「誰が見てもわかる駅らしい建物」にすることに腐心したという。かつての駅舎のデザイン要素を生かしたというだけに、どこかクラシカルな雰囲気を漂わせる外観に、アーティストの手になる大時計の掲げられた建物中央は、正しく駅であることを意識させてくれる。同時に、駅にとってはヒューマンスケール感が大切との考えから、広場と建物の関係にも気を配り、高層タワーをあえて東側奥に配置。「広場の端から建物が自然に目に入る8階程度の高さ」(臼井氏)にセンター棟を抑えている。 また、「駅の顔としてふさわしい建物にしたいということから、本来はタワーイーストにテナントとして入る予定だった大丸さんにお願いして、いまの西街区の土地を購入して出店していただいたのです」として、駅前の景観づくりはどうあるべきかに徹底してこだわった。JRタワーは正確にいえば3つの建物に分かれているが、まったくそれを感じさせないほどの統一感のある建物になっているのは、「駅前にふさわしい整備を共通の理解のもとで行なえたから」(臼井氏)だという。 JRタワーが開業してから、札幌の街では人の流れが変わったといわれる。巨大な規模の商業施設が誕生すれば、それも当然の結果とみることもできようが、人を引きつける魅力をもった建物の力も、そこに大きく貢献しているのではないだろうか。
関連サイト/JRタワーWEBサイト
大丸札幌店 新しい試みを積極的に導入し ゆったりと過ごせる施設の環境づくりに注力 JRタワー西側に位置し、建物全体と見事に調和しながら、クラシックかつモダンな表情を見せる大丸札幌店。しかしながら、同店の目指しているのは老舗・大丸の伝統を北海道の地に根付かせることではない。初出店、知名度の低さというハンデを抱えながらも、いかに地域の人たちに親しんでもらえるか、これまでに培ってきたホスピタリティで応えることが、最も重要なことであった。 そのためにこだわったポイントのひとつが、施設の環境づくりであったという。「阪神淡路大震災で被災した神戸店は、復興の際、お客さまにゆったりとお買い物を楽しんでいただける環境づくりを重視しました。大きく吹抜けを取り入れたり休憩施設を充実させたりと新しい試みを展開し、それがお客さまに大変な好評をもって迎えられた。札幌店においても、そうした他店のいいところはどんどん取り入れようという考え方で店づくりをしています」((株)大丸 札幌店長・小林泰行氏)。1階から2階にかけては38m×7.5m、高さ11mの吹抜空間があり、6階から8階にかけてはトップライトドームの天井のある3層吹抜けの空間がある。また、建物中央に配置されたWエスカレータまわりは自主編集売場を配置して床、天井の素材、デザインの統一感と広がりのあるスペースを確保。フロアごとにイスを置いてレストスペースを設けるといったように、全館にわたってゆったりと、安らげる空間となっていることが大きな特色となっている。 市街地に向かい一番外光を取り入れられる南東角には3〜7階にかけて喫茶をバーティカルに配置しているのも、そうした考え方が反映されているからで、しかも3階の「アフタヌーンティー・ティールーム」は4階までの吹抜け、8階のブッフェレストラン「ザ ブッフェ」も吹抜け構造だ。 こうした環境重視の新しい施設づくりに加えて、東京や関西に店舗をもつ強みを活かした商品、ブランド展開や、カスタマーズビューに基づく独自のブランド提供といった大丸ならではの力も発揮できるだろう。 オープンした3月期は42億2,000万円、4月期は32億7,000万円と、予想を上まわる売上を上げており、目標である年間350億円の達成は視界に捉えられたようである。 「新店であることの利点を活かして、既存店ではできなかったいろいろな試みをしていますが、百貨店という事業は、長期的な視点で問われるべき性質のものですから、いまの状況で満足していても意味がありません。やはり時間をかけて地域の方々に支持される店になっていけるよう努力していかなければなりません」(小林氏) そのためには「いつ行っても同じという印象をお客さまにもたれてしまってはだめです。文化催事やイベントなど、さまざまな機会を捉えて常に新鮮な情報を発信していくことも大切で、変化しつづける百貨店でありたいと思っています」(小林氏)
関連サイト/大丸札幌店
データ 2003年6月現在
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