ケーススタディ
鳥取二十世紀梨記念館

誰もが楽しめる展示の工夫により梨の歴史文化を発信
観光振興と産業振興の両立を目指す

データ

 
「人・もの・情報の行き交う交流ゾーン」として整備された「倉吉パークスクエア」内に、「鳥取二十世紀梨記念館」がオープンした。
 
 倉吉パークスクエアは、興和紡績(株)の倉吉工場跡地を公益的に活用する目的から構想されたもので、市民の意識調査などを踏まえて1995年に基本計画が策定されている。全体は、交流プラザ(図書館や研修室など)やふれあい広場、温水プールなど倉吉市が担当する事業と、大小のホールからなる「倉吉未来中心」、アトリウム、鳥取県男女共同参画センターなどの県の事業により整備されている。
 
 鳥取二十世紀梨記念館は県の事業の一環として整備されたものだが、片山鳥取県知事が93年ごろから、鳥取の特産物を活かして県内外の観光客を誘致できないかという考え方から計画を温めてきたもので、そのうちのひとつが今回、実現に至ったというわけである。
 
 施設はパークの中央部に位置するアトリウムに接して設置され、円形のドーム型形状をもっている。エントランスを入る前から導入展示として「梨のルーツ」や「梨と人との関わり」といった展示が展開されているのが特徴のひとつで、さりげなく館内へと人を誘う効果を発揮している。館内は建物の形状をそのまま活かしたホール型の展示空間となっており、中央に二十世紀梨の巨木がシンボルとして置かれ、約15分間隔で朝日から月夜までの時間の流れが照明によって演出されている。この巨木は地域の農家から寄贈を受けたものだが、これは同館のシンボルであると同時に、二十世紀梨の大産地としての歴史の象徴ともいえ、見るものを圧倒する存在感に満ちている。
 
 このシンボルを取り囲むように配置された展示は、「人と梨がはぐくむ文化」をテーマに、身近な食べものである梨を再認識し、また新しい発見をしてもらえるようにという観点から、幅広い年齢の人たちが楽しみつつ梨について学べるよう工夫されている。たとえば、2階に設けられている「梨と遊ぶ」のコーナーでは子どもたちが小さな虫になった感覚で巨大な梨や木の幹を「不思議探検」したりパソコンでのクイズに答えたりする内容になっており、その他の展示も、ゲーム形式で梨の栽培技術を知ることのできる「梨を育てる」や、昭和初期の梨農家の家を再現し映像とロボットを駆使して梨農家の視点から二十世紀梨の歴史と生産の苦労を描いた「二十世紀梨ものがたり劇場」(「梨と生きる」)「梨の来た道」をテーマにしたハイビジョンシアターなど、体験・参加型の展示やビジュアルのバリエーションをつくることで、誰もが楽しめるエンターテインメント性をもたせている。これは、“動きのない”梨をどのように魅力的に見せていくかという観点から、見せ方の工夫にこだわった結果であるという。
 
 その一方で、農具などの実物資料の展示を通じて梨栽培の足跡をたどれる資料展示室や、映像情報学習室といった、歴史民俗的な興味をもって来館する人たちのニーズにも応えられる展示もしっかりと組み込まれているが、同館を開設するにあたってもうひとつ注力したのが“本物へのこだわり”であったという。
 シンボルである巨木を展示することもそのこだわりのひとつであったが、これを生きていたときの状態で館内に再現するのは並大抵ではなかった。生木のハリを持続させるためにポリエチレングリコールを吸収させるというだけでも、複雑かつ巨大に枝を広げる樹木でそれを成し遂げるのは至難の業であった。
 それだけではなく、世界の梨を一堂に展示した「梨と世界の人々」の各品種のレプリカづくりや、「梨を育てる」のコーナーの梨園のジオラマなども、レプリカでは梨の色からシワの寄り方、軸の角度まで、ジオラマではスケール感や樹木の生え方まで、徹底して“本物”に迫ることを要求した。実際に産地を訪れたり、農園に足を運んで実体験したりといったことを重ねながらつくり上げられたのが、現在目にしている展示なのである。
 
 また、屋外には梨の木を植栽して育成した、世界初の円形棚もつくられている。
 ここまで“本物”こだわることによって、観光客が満足するだけでなく、梨づくりのプロの目で見ても納得のできる展示内容となっている。
 同館のもうひとつの特徴といえるのが、見るだけでなく、実際に梨を味わってもらうという場を設けていることで、1階のキッチンギャラリーでは、梨を使ったオリジナルの料理レシピ101種類をパソコン上で紹介するとともに、実際に調理したものを試食できるサービスも行なっている。
 ここには農家の加工品製造のグループも参加し、自ら料理を供しながら、自分たちのつくった商品の販売が行なわれている。こうした機会に梨農家と消費者が直に接したり、来館者の声を梨農家にフィードバックしたりすることで、農家の梨づくりへの自信ややる気の喚起にもつながっていくことが期待されている。
 
 今回のプロジェクトで当初から計画に携わってきた鳥取二十世紀梨記念館主幹・村尾和博氏は「梨記念館と産地は車の両輪のようなもので、産地が栄えてこそ記念館の存在も意味があります。ですから、生産者と消費者が互いに影響しあうことが大切です」として、館単独ではなく周囲の人たちとの連携の必要性を説く。農家との連携はもちろんだが、県の試験場や行政、鳥取大学農学部など、今回のプロジェクトを通じて関わった多くの機関、人たちとの協力を深めながら、館の展示や企画などに反映させていきたいとしている。また、集客面については周辺の温泉地などとも連携を図っていく考えだ。
 
 このように、単なる観光施設にとどまらない、農業振興の側面も強く意識されているだけでなく、交流を通じたソフトを重視しているところに同館の最も大きな特色があるといってよいかもしれない。
 けっして施設をつくって終わりなのではなく、そこからどのように変化をもたせ、発展させていくか、人と人とのつながりや交流を通じたソフトな方法で将来を見据えているのである。
 
 4月27日のオープン以来、現在までの入館者数は約6万人。大阪、岡山、島根といった県外からの来館者も多く、倉吉市が韓国の羅州市と姉妹都市関係にあることもあって、韓国からのツアー客も多くあるという。
「この数字が多いか少ないか、1年間の動きを見てみないとはっきりしたことはいえませんが、現状ではほぼ予想どおり」(村尾氏)の数であるという。来館者数がすべてではないが、人と人との交流が施設を支えていくとすれば、より多くの人が同館を訪れることで施設に活力が生まれることを期待したい。
 


データ 2001年7月現在

[所在地] 鳥取県倉吉市駄経寺町198-4
[連絡先] TEL.0858-23-1174
[オープン] 2001年4月27日
[事業主体] 鳥取県
[運営主体] (財)鳥取県文化振興財団
[敷地面積] 16,000m2(駐車場含む)
[構造] RC造地上2階建て
[延床面積] 5,400m2
[施設内容] 導入展示/シンボル展示/梨と生きる/梨を育てる/シアター「梨の来た道」/梨と暮らし・アートギャラリー/梨と暮らし・キッチンギャラリー/梨と世界の人々/梨と遊ぶ/実験コーナー/映像情報学習室/資料展示室
[利用料金] 大人500円(400円)
小・中学生200円(160円)
(  )内は20人以上の団体料金
[開館時間] 9:00〜17:00
[休館日] 毎月第3月曜日
12月28〜31日
[集客目標] 20万人(初年度)
 

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