ケーススタディ
日本科学未来館

参加体験型の展示やイベント
科学者・技術者との交流を通じて
最先端の科学技術に触れられる

データ

 
 科学技術振興事業団では、最先端の科学技術に関する情報発信と交流のための拠点施設「日本科学未来館(愛称:みらいCAN)」を、臨海副都心の東京都江東区青海に7月10日オープンした。
 
 初代の総館長にはロボット工学の権威である東京大学名誉教授の吉川弘之氏、館長には日本人初の搭乗科学者としてスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士の毛利衛氏が就任している。
 
 施設は、地下2階地上8階建て(高さ45m)、敷地面積1万9636m2、建築面積8881m2、延床面積4万0589m2(駐車場含む)の規模。参加体験型の展示やイベント、科学者・技術者との交流を通じて最先端の科学技術に触れ、体験することによって、新しい科学技術を文化として捉え、新しい価値観を創造する場になることを目指す。
 95年11月、“科学技術創造立国”を目指すことを目的にした科学技術基本法が成立した。これを受けて96年7月、総合的・計画的な施策を推進するための科学技術基本計画が定められ、98年12月、文部省、通商産業省、科学技術庁の3省庁(01年1月、省庁再編成により文部科学省、経済産業省の2省となる)が合同で、臨海副都心地区に「国際研究交流村」を建設することが決定した。そのなかで科学技術振興事業団は、この大学村内に最先端の科学技術の展示、展示手法の開発、研究者の交流等を通じて、科学技術の情報を発信する施設を整備することにした。
 
 このような経緯を経て開館した日本科学未来館は、科学技術への理解を深めていくための拠点であり、また同時に全国にある科学館活動の中心的役割を担うとの位置づけを与えられている。
 
 同館の理念は「科学技術を文化として捉え、私たちの社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うための、すべての人にひらかれた場」で、この理念に基づいて以下のようなMM[毛利衛]コンセプトの提案を行なっている。
 
(1)Movement:単なる「箱」ではなく、進化する運動体
(2)Movile:不動で自閉的な館ではなく、柔軟性をもった、携帯しうる「知のツール」
(3)Media:存在することが目的ではなく、新しい科学技術文化を創造するための「触媒」
(4)Meeting:館には境界がなく、新しい出会いの場、英知の交差、合流点
 
 このようなコンセプトのもと、同館では最先端の科学技術を体験する場にふさわしい空間となるよう、デザインや技術面においてさまざまな工夫がなされている。
 
双方向の情報発信を象徴する外観 
 開放的で透明感のある外観は、館の内と外の両方へと向かう、双方向の情報発信を象徴している。展示スペースの南北両側に交流・動線スペースと研究スペースが配置されており、シンプルでわかりやすい平面構成になっている。
 
ダイナミックな交流・動線スペース
 エントランス空間は、自然光のあふれる出会いと交流のスペース。各階はエスカレータと連続階段で自然につながれ、5階のドームシアター へと続いている。
 
フレキシブルな展示空間
 展示空間は間に柱の立たない30mスパンの壮大なスペースであるため、展示物の入替え等に対してフレキシブルな対応が可能。また、6階まで続く展示空間の連続性を確保するために、正面入口は1〜6階が吹抜けになっており、その間をゆったりとしたスロープでつないでいる。
 
スルーホール
 展示スペースと交流・動線スペース、研究室スペースのそれぞれのゾーン間に屋外ボイド空間“スルーホール”を設けている。これにより、奥深い室内に自然光と風を引き入れることが可能になっている。
 
 また、ランドスケープおよび館の内外の照明、アート、サイン計画においても、全体の設計コンセプトに基づいた個性的な作品づくりがなされている。
 ランドスケープでは、科学・自然・人の共生と融合をテーマに、館の正面では起伏ある地形を彫刻のように扱い、分子が衝突して弾けたり融合したりする様子を表わしている。そして屋外展示場は、技術や科学の研究から生み出される光の波、音の波、電子の波を表わす波打つ地形で構成されている。
 照明計画では、風・太陽・月の3つの光をコンセプトに設定。外観部分には風力で発光し、風の強弱で表情を微妙に変える「風の光」、展示ゾーンの一方の吹抜け部分は、緩やかな曲面の天井を月に見立てて青白い光をあてた「月の光」、そして展示空間と導入空間の間のスルーホールは「太陽の光」で、日没後も光で満ちている。
 アートの面では、エントランスから階段に沿って真鍮のフレームと和紙調のアクリル板でつくられた約150枚の“木の葉”が空間に浮かび、軽やかに上昇していく詩的なアート作品が目を引く。自然のエネルギーを秘めたものとして、吹抜けの大空間に連続性を生み出している。
 サイン計画の特徴は、一般に使われるスタンド等をできるだけ排除し、ほとんどすべてを床面に設けている点。情報を床に表示することで、来館者はサインの上を歩きながら進むという、まったく新しい角度からの情報の受け取りを体験することになる。
 
 さて、日本科学未来館の最大の売り物となるのが、その「常設展示」のレベルの高さである。
「21世紀の新たな夢を描く」との総合展示テーマのもと、「地球科学とフロンティア」「生命の科学と人間」「技術革新と未来」「情報科学技術と社会」の4分野の常設展示を行なう。
 
 なかでも、これら4分野を総合してダイナミックに象徴するのが、シンボル展示「GEO-COSMOS(ジオ・コスモス)」である。吹抜け空間に浮かぶ直径6・5mの球体で、科学のすべての出発点であり未来の舞台でもある“地球”を表現した、世界初の球体ディスプレイ。球体の表面には最新のLED(発光ダイオード)パネルが貼りこまれ、衛星からの画像データを取り込んだ地球の姿が刻々と変化する様子を映し出す。  常設展示4分野の内容と主な展示アイテムは次のとおりである。
 
●地球環境とフロンティア
 1、5階で展示。新たな自然観、自然環境共生の技術、観測・調査の技術をテーマ・視点とする。
 
・環境共生型住宅(エコハウス)
日本の伝統的な民家と、屋根緑地や太陽電池屋根、涼風を取り入れる工夫、建材をリサイクルしたエコプロダクツの活用など、自然と調和して暮らすための新旧の優れた点を1軒に盛り込んだ実物大の住宅模型
・高性能低公害車・KAZ(エコカー)
最高時速311kmを記録した8輪駆動の電気自動車「KAZ(カズ)」。リチウムイオン電池を搭載し、1回の充電で300kmの走行が可能。
・高性能潜水調査船「しんかい6500」
世界最深の潜水能力をもつ有人潜水調査船「しんかい6500」の実寸大模型(全長9・5m、最大幅2・7m、空中重量26t)。来館者は耐圧殻の中に入って、深海に挑む研究者がいかに狭い空間で研究活動をしているのかを体感できる。
 
●生命の科学と人間
 5階で展示。新たな生命観、生命の仕組みを明らかにする技術、ヒトが健やかに過ごすための技術をテーマ・視点とする。  主な展示アイテムとしては、「ゲノムハープ(塩基カウンター)」や「人工臓器/現代解体新書」、顕微鏡観察実験装置などがある。
 
●技術革新と未来
 3階で展示。新たな物質システム観と道具観、文化としての科学技術、地球に適合する技術革新の方向をテーマ・視点とする。
 
・人間型ロボット・PINO
PINO(ピノ)は、人と生活を共にするのに必要な運動能力、環境との調和性、リーズナブルなシステムをキーワードに開発されたヒューマノイド(人間型ロボット)。科学技術振興事業団ERATO北野共生プロジェクトで研究開発され、現在も進化を続けている。従来の強くて重いロボットではなく、童話『ピノキオ』をモチーフに、か弱さをデザインに取り入れた(全長75p、全幅32p、重量4・5s)。00年に通商産業省グッドデザイン賞を受賞。
・みらいCANマグレブ(リニアモーターカー)
超伝導バルク体と永久磁石のマイスナー効果により安定浮上する列車が、全長30mのレールをダイナミックに走行する。磁気浮上の不思議さをゲーム感覚で楽しみながら実感できるように、列車のスピードは来館者自らが操作できる。
 
●情報科学技術と社会
 3階で展示。新たな情報世界観、世界とつながるための技術をテーマ・視点とする。「探検コンピュータの世界」や「インターネット物理モデル」「スモールフィッシュ」などの展示アイテムがある。
 さらに同館では、年に数回の「企画展」と月1回程度のフォーラムやセミナー等を展開する。特に今回はオープンを記念した企画展として、第1回特別展「ダ・ヴィンチとルネサンスの発明家たち」展が1階の催事ゾーンで9月2日まで開催されている。
 
 なお日本科学未来館では、単に展示を見てもらうだけではなく、開かれた交流の場としての活動も行なう。年会費(1人1000円、家族を含めると2000円)を払うと1年間の入館が無料となる「友の会」という会員制度のほかに、一般の人と科学者・技術者が一堂に集い、科学やその他の文化活動について自由に語り、考え、刺激しあえるような交流の場となる特別会員組織についても、近く発足させる予定である。
 


データ 2001年7月現在

[名称] 日本科学未来館
[所在地] 東京都江東区青海2−41
[連絡先] TEL.03-3570-9151
[オープン] 2001年7月10日
[事業主体] 科学技術振興事業団
[敷地面積] 1万9,636m2
[建築面積] 8,881m2
[建物構造] 地下2階地上8階建
[延床面積] 4万589m2
[施設内容] 常設展示(「地球環境とフロンティア」「情報科学技術と社会」「技術革新と未来」「生命の科学と人間」)、イノベーションホール、みらいCANホール、ドームシアターガイア、会議室、実験工房、サイエンスライブラリー、研究開発ゾーン、催事ゾーン、オリエンテーションルーム、レストラン、カフェテラス、ミュージアム・ショップ、ほか
[駐車場] 一般利用175台
[入館料] 19歳以上500円
18歳以下200円、ただし6歳以下の未就学児は引率者1名につき2名まで無料
8名以上の団体は2割引き
[会員制度] 友の会(会報送付・1年間入館無料)一般会員1,000円、家族会員2,000円(同居の家族)
[開館時間] 日〜木曜日(火曜日除く) 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
金・土曜日 10:00〜19:00(入館は18:30まで)
[休館日] 毎週火曜日(祝日にあたる場合は開館)、年末年始(12月28日〜1月1日)
 

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